「三ツ石山周回コース」 2003.7.11
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 昔習った地理か理科の地質の勉強で、火山の形についての絵を覚えている人はいますか? 富士山のような円錐状の形をコニーデ(円錐状火山)、八幡平頂上のようになだらかに横に溶岩が流れ出た火山をアスピーテ(盾状火山)、昭和新山のようにもこもこと溶岩の形が盛り上がった火山をトロイデ(鐘状火山)と分類しています。
 それぞれ溶岩が地表に出たときの粘度によって形が決まってきますが、はじめはアスピーテの形に流れ出て、最後に中心付近に粘度の高い溶岩がぽこんと出たものを、「アスピトロイデ」と言います。八幡平付近にはこれに当たる形状の山がいくつかあります。八幡平の3大展望台と言われる、茶臼岳 源太森、モッコ岳はみなアスピトロイデです。だから展望が良いのです。逆に純粋なアスピーテである八幡平頂上は展望が利かないため、人口の展望台が設置されています。
 さて、三ツ石山もこの形ですので、なだらかな丘を幾つか越えて行くと平原に圧倒的な存在感を持って中央丘が現れます。 それでは7時間の周回コースにお付き合いください。
 
 
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出発地点は3軒の旅館がある松川温泉です。
近くには日本での草分けとなる
松川地熱発電所があります。

ここはまた奥産道(奥地産業開発道路)
の北側(松尾村)の出発点にもなっています。
谷沿いの道は20年程前から行き止まりですが、
途中に巨大なアーチ橋が架かっていたりします。

 さて駐車場から峡雲荘の前を登って行くと
源太ヶ岳・裏岩手縦走路登山道の入り口があります。
9:02
三ツ石山の頂上だけが目的の人は
このコースではなく奥産道の南側の起点、
雫石町の網張から登る人が多くなります。

ですので松川温泉からの道は利用者が少なく、
やや藪に木道が覆われている部分もあります。
しばらくは森の中を登ります。
黒いホース(ポリパイプ)は
松川温泉に水道の水源を引く導水管になっていて、
源太ヶ岳までの中間(2.3km)
にある丸森川まで続いています。

昔の登山道は流れをせき止めた取水堰まで
迂回して進んだのですが
今は立派な橋が架かっています。
9:44
丸森川から少し坂を登って
また平らな林間の木道を行きます。→
森の風景を3Dで切り取ってみました。
3Dが良く分からない人はこちらへどうぞ。


松川温泉から3kmにある水場です。
このあとは大深岳を下るまで水場はありません。
誰かがピンクのアニメ入りコップを
置いてくれています。
↓  10:12
ここまでは予報どおり曇りの天気で
霧が時折かかる中を登ってきましたが、
大深山荘との分岐点まで来た頃
急に雲が切れて青空が流れてきました。

目指す源太ヶ岳方面も見えてきましたが
遅くまで残る東斜面の雪渓があります。
この雪渓を横切って登山道は続いています

急斜面の上に、表面は固くしまっているので
乗っただけで滑り落ちます。
アイゼン等は用意していないので
雪のない部分を巻いて行きます。  11:02
下を巻いて行くのが正解なのですが、
上を回ってしまい、怖い思いをしました。

雪渓の縁では雪が融けたところから
高山植物が次々に咲き始めます。
ですので雪融けの遅い年には8月になっても
雪渓の縁に水芭蕉の花を見たりすることができます。

しばらくお花畑の散歩にお付き合いください。
イワカガミ・チングルマ・ハクサンチドリ
ショウジョウバカマ・ヒナザクラ
距離数が合わないのですが、
源太ヶ岳頂上です。まだ霧で視界は利きません。→
11:13
大深岳の方が明るくなって見えてきました。
まだ梅雨が明けていないので
山に登ってこれくらい見えるだけでも上出来です。↓

大深岳近くにはニッコウキスゲも咲いてます。

大深岳を越えて、昨年の「裏岩手国体コース」
と同じ区間を少しの間歩きます。
←向こうに岩手大白森が望めます。 11:50

裏岩手縦走路の一部である小モッコ岳へ向かいます。
さっき越えてきた源太ヶ岳を振り返ります。

笹の小道をジグザグに下りきったところに
小さな流れがあり、のどを潤します。
ここも雪融けが遅かったせいか、ほとりには
シラネアオイやオオバ黄スミレが
咲き始めたところです。 ↓  12:12
小モッコ岳へは
鞍部から標高差で約100mの登りです。
また3Dでご覧ください ↓

小モッコ岳へは急斜面の登りになります。
ガレ場の所々に咲いている小さな花を見ながら
ゆっくりと登って行きます。 

← 小モッコ岳頂上で昼食休憩にします。 
普段は頭の上にある雲が、
横の谷間を流れて行きます。
   12:34〜12:59

これから三ツ石山までの間は大きな起伏もなく、
花と池塘を縫った雲上の散歩道を行きます。

石楠花も色の具合が各種あります。 ↓
白い点点は石楠花の花です。
この区間一面に咲いてます→

途中の稜線上に、気象観測機器が設置されている
ところがあります。 13:15 ↓

時折霧がかかり池の表面を撫でて行きます
お花畑と池塘を軽いアップダウンを
繰り返しながら縫って行くと
少しの樹林帯を抜けて台地の上に出ます。13:38
むこうに目指す三ツ石の姿が見えてきました。↑

↓ これがアスピトロイデの三つ石山頂上です。
霧も切れて圧倒的存在感をもって迫ります 13:50 
三度目の三ツ石山登頂です。
20年程前に一人で今日と同じ行程を、
10年程前には長男と次女(当時1年生)と妻と4人で、
「雲の上に乗って飛べるか」を検証しに
滝ノ上温泉から登りました。そのときの結果は、
当然ハイジみたいには飛べないということでした。

この日初めて会った夫妻の登山者に 
写真をとってもらいました。 
頂上には岩手山噴火の監視カメラが設置されて
いますので最高点はこのカメラになります。
   13:57〜14:18
越えてきた源太が岳〜大深の峰が見えます。
30分程下ると三ツ石山荘があります。
ここは畳敷きのスペースがあるし、
雫石町側から奥産道を詰めて来ると割合に楽に
来られるので今度は泊まりに来よう。

この小屋の裏と表には大小の池塘があります 14:47
林間のなだらかな道を下り、最後に急坂を下りると
松川温泉松川荘の入り口に戻ります。
ここまで休憩時間を含めて
約7時間の充実した歩行でした。
16:05 着

ここで第1日はおしまい。でも、もう一日あります。
八幡平見返り峠駐車場に移動してマンボウ君でおやすみなさい。


翌朝は日の出が4時過ぎに
すばらしい空の色の変化を見せてくれます。
車の中に居ながらにして
ショーを楽しむことができます。
惜しいのはこの時期の日の出の位置は
やや北に寄っていますので
地平線や雲海からではなく、
源太森付近の山から登ることになります。 4:38

雲海に浮かぶ岩手山 ↓
ここから八幡平頂上付近の朝の散歩にでかけます。
残雪が鏡沼に半分沈んでいます
中間に見えるのはモッコ岳、
ずっと奥は秋田駒ヶ岳です
沼のほとりを回って
頂上近くの遊歩道から登山道に入ります
このコースをまっすぐ行くと
ふけの湯温泉に至ります。
ミツガシワとワタスゲが浮かぶ
池塘のある十字路に来ました。
この道を北へ下ると草の湯を経由して
兄畑コース入り口に出ます。
12年前、小学1年になったばかりの長男を連れて
キャンプをしながら
「とっておきの温泉Part1草の湯」
に入りに行ったのが
昨日のことのように思い出されます。
しばし湿原をさまよって思い出にひたりました。
ぐるっと登山コースを一周して、
八幡沼ほとりの遊歩道に出ます。
新築になったばかりの山小屋、陵雲荘が見えます

いま問題になっている山小屋のトイレ。
ここでは微生物による分解方式をとっています
このため分解の阻害になるような
ビニール成分を含んだティッシュは使用禁止です。
通常のトイレットペーパーや
分解型のポケットティッシュなら使用できます
なるべく使用しないようにするのが
「環境にやさしい使用法」でしょうか。
←小屋の裏手にある浄化装置の上部。
雨水等の水分も微生物の分解作用に
影響していると思われます。
室内のストーブ。
今までの山小屋のストーブとは
感じが違います。
これで今回の野遊びはおしまいです。
自分の足で行動できる幸せを味わった
2日間でした。
やはり車だけで現地に行くのではなく、
その先の少しを歩くことで
旅の充実度は全然違ってきますね。