「八幡平 大場谷地から安比高原へ  2023.07
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 岩手と秋田にまたがる八幡平で、秋田側の遊歩道等は数年前に熊害が発生したことにより、道端の駐車スペースはおろか、大場谷地の駐車場もずっと閉鎖されたままとなっていました。それが期待しないで行ってみると解放されているではありませんか! 喜んで散策するとニッコウキスゲが咲き乱れる季節でした。 その前に散策した玉川温泉の遊歩道、八幡平頂上付近の周回、畚(モッコ)岳登山、安比高原散策 と、いつも行っている所ながら天気にも恵まれ楽しく歩き回ってきました。

 玉川温泉手前の一般来訪者用駐車場は、夕方16時には閉鎖されて出庫出来なくなります。玉川温泉旅館の日帰り入浴は15時までで、受付は14:30までです。(2023時点) 同様に一山越えた後生掛温泉も15時までです。(以前はもっと遅かったような気もするのですが)
 この日は寄り道しながら行ったので到着が14:30を過ぎていたので、駐車場の係の人から、入浴目的ではないことを確認されて、止めることが出来ました。駐車場奥の階段を下って行きますが、歩きやすいようにウッドチップ舗装がなされていました。
 平日の午後なので、「玉川温泉自然研究路」にはあまり多くのお客さんは歩いていませんが、所々の温熱スポットで横になって岩盤浴をしている人もいます。
 大噴(おおぶけ)から湧き出る大量の温泉水からは湯華が含まれるようで採取施設があります。
 道は噴気地帯に進みますが、オンドル小屋が3棟あります。満室ではないようですが、こちらを利用する人の中には難治疾病の治療目的の人が多いと聞きましたので、本当に誰も居ないのでなければ、観光目的の私たちは入らないようにしています。
 その代わり裏手に回ると岩盤が熱を持っているところがあちこちにありますので、持参したバスタオルを敷いて横になります。一枚敷くことでやや熱すぎそうな所でも利用できます。おひさまが出ているので仰向けはとても眩しいのですがこれも帽子を被せて対応します。ザックのクッションを枕代わりにして、しばし岩盤浴を楽しみます。
  強い噴気地帯を過ぎて少し上ると、名残峠の方から流れてくるお湯の川に出ます。この温度もちょうどよいので今度は足湯をいただきます。
 焼山への登山道入り口には、入山者確認用のカウンターと立札があります。熊害防止を呼び掛けるものかと思いきや、火山性ガスへの注意喚起で、コースを外れないようにということのようです。一本隣の叫沢では過去に何度か人身事故が起きていますし、焼山からベコ谷地に向かう途中の湯ノ沢も2022からガス濃度が高いために立入禁止となっています。
 玉川温泉のある仙北市から北上して鹿角市に入ったところに大場谷地があります。ここは熊害防止のために何年か閉鎖されていたので、今年もだめだろうとあまり期待せずに通りかかってみると、なんと!駐車可能ではありませんか。早速止めて散策を始めます。
 ウチの熊対策は、3種類の熊鈴と、熊撃退スプレー(大と中)と、ストックです。木道を進みますが、両側から覆いかぶさっていた草木が刈り払われたばかりのようです。
 いくらも進まない所に展望デッキ(下写真右下寄り)があります。高さは無いのですが、花や湿原と同じ高さの目線で座って楽しむことが出来ます。


 ニッコウキスゲは花盛りなのですが、一日花なので、昨日までに咲き終わった花も残っていて,これから咲くつぼみとの数を比べると前者の方が多く、この辺り(標高1000m弱)での花の最盛期は越えたことがわかります。
 他にも石楠花や、モミジカラマツ、ワタスゲ、ゴゼンタチバナ等々見られます。
 以前には木道が消えて登山道になるところまでいってみたことがありますが、その先には「茶釜の滝」があるようでした。ややハードな行程なので行ったことはありません。
 木道を進んでゆくと、二人のベテランが帰ってくるのと出会いました。お話を聞くと 茶釜の滝 まで行ってきたということで、片道2・3時間かかるそうです。またこの木道のあたりの草木は出発時には刈られていなかったということで、この日(2023.7.7)の日中に作業が行われたようです。
 なお、駐車場の隅に脱輪故障したとみられる車がいたのですが、多分既に救援を呼んでいるだろうと見込んで、散策から帰ってもまだ居たら声をかけてみようと思っていたところ、まだ居ました。実はケイタイも繋がらず途方に暮れていたそうで、早く対処してあげればよかったと反省しました。アイスを二人分渡して次へ向かいました。

この日はさほど汗をかくほどではなかったのですが、もしまだ営業しているお風呂屋さんがあれば入りたいなと思いながら、トロコのゲートから頂上方面に向かいます。大沼の畔の温泉は今は閉業してしまっているようです。まっすぐ進んで後生掛も前述のように15時までです(この時点で17時を回っていました)。ビジターセンターから左(=東)に曲がって、秋田八幡平スキー場に面した、一本裏通りに入ります。

 以前にも利用したことのある「八幡平ふれあいやすらぎ温泉センター ゆらら」に来て、入り口に表示されている営業時間をおそるおそる見てみると… なんと! 日帰り入浴営業時間は18時まで(入館は17:30まで)となっているではありませんか!喜んで準備をしてお風呂をいただきました。館内の写真は撮らなかったのですが、明るく清潔で、ひなびた感は無いのですが天然温泉で森に面した露天風呂やサウナもあり、清潔保持目的の入浴には申し分ありません。
 またホールには体組成計や無料の全身マッサージ機もあり、昼は食堂も営業、飲料やアイスの自販機もあってゆっくり過ごすこともできます。宿泊は出来ませんが、この辺りでは穴場だと思います。

もう一軒、この並びで営業している 八幡平高原ホテルというところもあります。こちらは宿泊可能のようですが、私はまだ利用したことはありません。 (右写真)

 アスピーテラインを登って見返峠駐車場に向かいます。あらためて原生林を見ると、立ち枯れした木がたくさんあるのに気が付きました。翌日の散策でこの原因がわかります
 

八幡平頂上ホテル(見返峠駐車場)に着きました。車中泊では夜間のトイレ利用可否が重要になりますが、今回は北端にある単独トイレ棟が利用可能でした。だいぶ前ですが、全て利用不可の時もありました。翌朝に登山者団体を乗せて登ってきたバスは、やむなく藤七温泉の方にトイレを借りに行ったようでした。登山基地の側面もあるここの駐車場にはトイレは必須の設備です。梅雨時で残念ながら鳥海山方面までは見えませんでしたが雨も強く降らずホテルの一夜を過ごしました

翌朝は梅雨時でもあり、小雨がパラつく天候です。でも現状維持だと歩いても濡れない程度だし、いつも雨具は最低限持参して散策するので、せっかくの八幡平を周遊にでかけます。

本来の見返峠に着きました。ここには案内板とトイレ跡があります。駐車場レストハウスと山小屋の陵雲荘の間にありますのであまり重要性が無いので廃止したものの撤去工事にも費用が掛かるので放置している…といったところでしょうか。

遠方から、秋田駒ケ岳・モッコ岳・見返峠駐車場ですが、左下に無料の駐車場も見えます。料金は500円なので、有効活用を期待して私はいつも有料に止めています。7月に入りましたが残雪がまだ少しあります。
花たちを愛でながら進みますが、昨日も気になった立ち枯れた針葉樹(アオモリトドマツ?)が多くあります。近寄って木肌よく見ると、横方向に虫に食べられたらしい跡がたくさんあって、樹皮が剥がれて枯れてしまうという状態のようです。
イワカガミやベニバナイチゴなどもありますが、ニッコウキスゲも咲いています。でも昨日の大場谷地より標高が高いせいか、これから咲くつぼみがたくさん残っています。全体の株数としては大場谷地の方がたくさんです。

やがて歩道は八幡沼の畔に沿って伸びて行きますが、ちいさな池塘もちりばめられています。不定形の「神様の田んぼ」を眺めるのが好きです。

木道沿いにはワタスゲもたくさん。食虫植物のモウセンゴケもいます。

コバイケイソウは、あまり多く群生していると可愛げが無いのですが、少しだけ咲いていると意外に見られます。
一番大きな八幡沼の周辺には無数の大小の湖沼があります。ほとんどは無名なのですが、こちらの沼だけは「みくり沼」という名称があります。他の沼も含めて以前に撮影した 空撮動画がこちら にありますのでよろしければご覧ください。

ちなみに立山・室堂にはみくりが池があります。

 

いろんな小さな花たちが次々に現れます。ミツガシワの親戚で花がそっくりのイワイチョウ(左上)、アカモノ(上)、チングルマの花の跡(左)、まだ残っていた舞鶴草(下)です。

 みな小さくてかわいいのですが、どれが好きかと言われると… 下のチングルマ(稚児車)の白い花びらが付いて、たくさん咲いているところでしょうか。
 みくり沼の北の三叉路から、八幡沼周回だけではもったいないので、東へ足を伸ばして源太森の頂上に来ました。奥の少し左にこのあと登るモッコ岳が見えます。
 

右に左に花を楽しんで進んできましたが、ヒナザクラが陵雲荘の近くに来ると咲いていました。雪田が消える端から咲くことが多いので、つい最近まで雪が残っていたところかと思います。 

 

八幡沼とガマ沼にはそれぞれ展望台があって、さっき訪ねた源太森や、岩手山も望むことが出来ます。

 ガマ沼から頂上へ向かう途中の道端で、サンカヨウと白根葵の花を見つけました。もう過ぎてしまっているかと思いきや、局所的な環境の差でしょうか、今年もお目にかかれてよかった花たちです。道は見返峠駐車場の方へ向かいます。この辺りには3個の沼が並んであって、一番南側の低地の方にあるのが鏡沼(ドラゴンアイ)です。右写真は上方にある めがね沼の北側でまだ残雪があります。下が鏡沼ですがすっかり雪は解けてしまっています。
 キヌガサソウが群落で咲いているところがありました。ですが場所は謎の甌穴の中。よく案内板を読むと、咲くことが書いてあります。ただし他の地表の平均よりもやや遅いような気がします。この辺りはドラゴンアイ詣での人達で残雪期は賑わう街道沿いですが、有名になる前には、樹間の雪道で迷いやすく、案内の竹竿もこのコースには設置しないで、ガマ沼・頂上方面に誘導することにしていると、関係者の方に聞いたことがあります。

 見返峠駐車場に戻って休憩しますが、以前は樹海ラインとの三叉路の秋田側にあった「八幡平パークサービスセンター」が、岩手側のレストハウス北側に移設されていました。内部では本来の案内業務の他、オリジナルグッズの販売や花やドラゴンアイの説明写真もあります。
 ここから樹海ラインを通って麓へ向かいます。藤七温泉で黒玉子を買って、まっすぐ帰るのはもったいないので、畚(モッコ)岳にも登ってゆくことにします。裏岩手縦走路の起点になる所に看板があります。とぎれとぎれに全行程をわけて縦走したことがあり、大深岳から秋田側の大白森経由で鶴の湯までも一泊で歩いたことがあります。でも現在では体力的には無理かもしれません。
 昨年も登っていますが、その時より雪解けが少し進んだ時期なので、花も少し違う種類になっています。 上写真の雪渓では昨年はスキーをしている人がいるくらい大きく残っている時期でした。
 畚岳へは、近くの道路から写真を撮りながらでも30分ほどで山頂に至ることが出来ます。三叉路の道標だと残り200mとありますが、傾斜がきついのでもう少し長く感じます。足場が悪いので特に下りでは転倒しないように注意が必要です。
 頂上直前の青空がなんとも言えません。↓
 こちらも道端には花がたくさん。ニッコウキスゲや石楠花も花盛りです。大場谷地であった人が言っていましたが、五葉山の石楠花は大きい(木が)のが普通ですが、他で見るとあまり木の丈は無いようです。
畚岳山頂からは、いろんなポイントが同定できます。下写真は八幡平頂上方面ですが、アスピーテの名らしく東西に長い盾状の形です。でも地質的には数々の火口が並んでこのような形状になっているので、本来の粘性の低い溶岩が広がってできた地形ではないとの説を見ました。他に岩手山・秋田駒ケ岳・森吉山・御所掛け大湯沼なども見えます。玉川湯ノ沢の吊り橋も澄んでいると見えます。
右写真〜手前の裸地は後生掛の遊歩道のあたり、遠方は澄川地熱発電所建屋  
下写真〜左奥は森吉山、右手前は秋田焼山  
右下写真〜岩手山
 再び樹海ラインを松川温泉方面に向かいます。樹海ラインには未舗装で未開通の時代から来ていましたが、草原・湿原に近い所があるなとは思っていました。今回の通過でニッコウキスゲの群落がここにもあることがわかりました。ただし駐車場も歩道も無いので望遠で眺めるだけです。 もう少し行くと岩か何かが落ちてる?と思って車を止めると、動き始めました! トウホクノウサギ(東北野兎、多分)が駆け回ります。動画はこちらからどうぞ。
 キャンピングカーの弱点は、夏の暑さに弱いことと、お風呂が付いていないことです。前者は騒音の出ない小型燃料電池の登場が待たれます。後者は多分どんなに大きなキャンカーでもトン単位の給排水を備えることには無理があるので、近くにたくさんある温泉を利用して解決します。

人家のある岩手県民の森迄下りてきて、いつもの森の湯(上写真)に入ります。以前はこちらには舞台湯という高い見晴らしの利く湯舟があったのですが、今は利用できません。

 生鮮食品の補充に、良く立ち寄っていた松尾日販がなくなってしまったので、なかなか代わりになるようなお店はもっと麓迄下りてゆかなくてはなりません。松ちゃん市場で少し買って、イーハトーブ火山局も見学しようとしたのですが、見学時間を過ぎていたので、安比に向かいます。
 安比高原へはほぼ欠かさず毎年通っています。ここに来るとほっとします。奥のまきばの池塘には、たまに変わったトンボがいたりします。
 おひさまが傾いてきましたが、ここに泊まるので急ぐ必要はありません。真夏迄もう少しの季節ですが、ヤナギランが咲き始めています。〇〇りんごの花と、アザミもあります。
 ぶなの駅の前には他にお客さんは居なくて、ゆっくりとビールをいただいて夕食にします。次第に暗くなってきますが、夏至近くの時期には19時でもまだ十分明るくて、20時頃まで夕焼けの変化が楽しめます。
 翌朝は霧の中を日が昇り始め、西森山・前森山に係ったり消えたりしながら次第に夏の日差しが強くなってきます。
 この刻々と変わる景を楽しめるのも安比に泊まった人の特権です。
久々にぶなの二次林内を散策します。道標が20mごとにありますので迷いませんが、もし無かったとしたら同じような景色で方向感覚と地形が頭に入っていない人は大変かもしれません。
 時々開けて野原や笹薮になりますが、またぶな林に入ります。大きな木が何か所かにあります。マザーツリーとして残されたものもあります。またいろんな花が咲く広場に戻ってきて、初夏の八幡平・安比ツアーは完了です。