「花の秋田駒ケ岳」 2004.07.03 
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 日本百名山と並んで花の百名山というのがあります。当然そこには多くの登山者(今ではほとんどが中高年。かくいう私もその一人ですが) が訪れます。私は臍が曲がっているので、「山の価値はそこで多くの人間に会うほど半減する」なんて思っています。 その主張からするとあまり行きたくないような山なのですが・・・。
 初めてここに登ったのが25年ほど前の9月初めでした。そのときは駐車場もスカスカで、登山道で出会う人もまばらでした。 当時は元気でしたので、8合目駐車場から雄岳、1583の峰を回って、縦走して乳頭山まで、そのあと千沼ヶ原に寄り、また駐車場まで戻ってきました。そのあと国民宿舎の駒草荘に一泊しました。 今回山の帰りに駒草荘の展望露天風呂で一風呂浴びようと行ってみましたが、建物は無くなって整地されてしまっていました。廃業したのでしょうか?それとも建て替えられるのでしょうか? 
 混雑するにもかかわらず、私がここに行くのは、やっぱり花の美しさと東北には少ない変化にとんだ山容を楽しみたいと思うからです。 それでは今回も2人と一匹でご案内します。



 
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 夏山シーズン中、この8合目駐車場へはマイカーの乗り入れ規制が行われます。夜間を除き、自家用車が入ることができません。昼に麓に着いた方はバスに乗り換えることとなります。
 幸か不幸か私たちは夕方近くに自宅を出発したので規制時間を過ぎて到着し、駐車場まで上ることができました。駐車場ではテントを張って寝ている方もいましたがこういう場面でキャンピングカーは絶大な威力を発揮します。
 夜の間にも次々と車が到着して、規制開始時間にはバスの駐車スペースを除いてほとんどふさがっていました。


 バスを降り立ったツアー客の皆さんにコンダクターの方が、「トイレに行って5分後にここに集合」なんて声を掛けています。


                    →
 道端には白山千鳥が何株か咲いています。この花は八幡平や裏岩手などに行くと多く見ることができますが、経験上からすると「お花畑」よりも車道や歩道の「みちばた」に多く生えるように思います。
 みんなが行くコースの他に、静かな旧道があります。やや急な斜面のトラバースとかスノーブリッジが残る所もありますが、登山道としては普通のレベルと思います。
 駐車場から5分も行かないうちに硫黄鉱山跡に向かう分岐があり、左に分かれます。特に標識はありませんが、2万5千分の1地形図には道が書いてありますので注意していれば間違わずに入ることができます。
 このコースを回ると途中からの田沢湖展望と、お花畑を見ることはできませんが、そのかわり・・・

 
 侵食で尖った峰を伝い、小川をまたいで、硫黄地帯の植生の剥げた所を行きます。右下の沢沿いは残雪に灰色の小石が乗っていて一部スノーブリッジになっています。
 正面奥は男女目岳で、秋田駒ケ岳の内の最高峰です。その下の灰黄色のあたりに、採掘していた跡があります。
 道は左の斜面を巻いてゆきますが、雪解け間もない頃は踏み跡が平らになっていませんので、滑落しそうになります。場合によっては向かって右の斜面を進み、スノーブリッジを渡ったほうが安全そうなこともありますが、04年に雪渓が崩れて被害者の出たところもあったようですので、やはり自己責任で通行ください。

 雪渓を上方から見たところです。右下の谷から雪に乗って向こう岸に渡ったこともあります。

 だんだん高度を上げて振り返ると向こうに乳頭山が見えてきました。      ↓



 このあたりからいろんな花が現れます。エゾツツジ
 このコースの楽しみの一つがこの直立した岩に生える小さな花です。(スミレみたいな気がしますが名はわかりません) この岩は触ると表面が崩れるくらいもろく、保湿性に富んでいるため、凹部にこの花の集落ができる環境をつくっているようです。  →

 山野草の専門誌で、やはりこの岩と花が載っていたのを見たことがあります。ちょうど開花する時期で無いと見過ごしてしまいます。私も実はいいタイミングで出会ったのは2回目です。前回よりも株数が増えているような気がします。 くれぐれも「とるのは写真だけ」にしましょう。
 ← 最後の急斜面をロープにつかまって(つかまらなくても行けますが)登りきると、木道のある平らな所に出ます。向こうの雪渓もいつも遅くまで残っていますが、年によって硬さが違うようです。以前はビデオを撮りながら上っていって、途中から下まで滑落したことがありました。それでもカメラを放さなかったので、その場面はあとでNHKのビデオ番組で篠田監督のコメントをいただくことになりました。

 チングルマのお花畑が広がっています。

    リビが先に進んで、早く! と呼んでいます。↓
 新築なった避難小屋の前を通って阿弥陀池のほとりを回ります。このあたりで出発前に普通のコースをたどっていったパーティと会いました。私も写真を撮りながらでしたので所要時間にそう違いは無いようです。
 途中で振り向くと阿弥陀池の向こうに岩手山が・・・見える角度なのですが、雲に隠れて見えませんでした。梅雨時ですといつもは太平洋側が雲海になっていて、岩手山、早池峰山、焼石連峰などが、ノアの大洪水に残った地表のように浮かんで見えたりします。
 鞍部に出ると雌岳が姿を現しました。ここから男岳へは向かわずに、ムーミン谷への急斜面を降りてゆきます。
    
 火口壁を降りてゆきますので、急斜面をジグザグに曲がります。道幅が狭いので、すれ違い時にはリビはお座りさせてじゃまにならないようにします。 白根葵が出てくるともうすぐ谷底です。
 急斜面で浮石が多い地形・・・そうです、落石の危険があります。斜面には下から上までの間にこの時十数人の方が歩いていました。 誰かの怒鳴り声と、その上でスミマセーンという声が聞こえました。 カラカラと音を立ててカボチャ位の石が何個か落ちてきます。まだ遠くだったので荷を下ろして犬のリードを放して、動きやすくして上方に目を凝らしましたが幸いコースもずれていて、途中で止まったようでした。気をつけなくちゃ。
 この時期のムーミン谷はチングルマのお花畑で埋め尽くされています。それにしても誰が名づけたか、妖精が住む谷のようなすばらしいところです。 (ムーミンのアニメを見るとカバが話しをしているようにも見えますが、あれは妖精なんだそうです)
 ムーミン谷を進むと池が現れます。駒池といいます。水泳の大好きなリビは早速入ってみていましたが、泳ぐところまではしませんでした。
 やがて道は植生が途切れた火山レキの斜面になります。このような過酷な環境の中に点々と咲いている植物があります。それが駒草です。 この回り方ですと最初に遠くにある個体しか見ることができませんが、大焼砂を上って行くと間近に見られる場所があります。 中には誘惑に負けて立ち入り禁止部分に踏み込んだ跡もあります。後半で接写できる所までがまんしましょう。
 ←右端のムーミン谷を回って、左の稜線(大焼砂)から上り返してきました。この区間に一番花を見ている人がいます。
 ところでリビは焼けた火山レキの上ばかり歩いているので、すこしつかれたようです。それでも人間よりは元気。すれ違う人達に誉められています。自分で歩いて登ったんですか?とか、頭をなでて行く人とか。 犬連れ登山については、いろんな考えをもっている人がいるようですが、この日すれ違った人の中には怖がったり、「自然破壊」を危惧する人はいないようでしたので、ほっとしました。 私も、一番の自然破壊者は人間だと思いますが。
 1583mのピークを越えて、小焼砂で小休止。さっき通った阿弥陀池の辺りが霧に覆われて来ました。他にも石楠花や、よく名前のわからない花がたくさん咲いていました。 そしてまた人通りの少ない別のコースを8合目まで戻ってきました。
 帰りには「友情の滝」に寄ってみました。それから駒草荘が無くなっていたので、水沢温泉に入ってきました。
 
 山歩きと温泉と花・・・この組み合わせがとてもいいところです。