「安達太良山 頂上直下まで とその続き 2004.7.18  9.24
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 昨年の東吾妻、魔女の瞳から1年。今年も福島別荘を起点に、あまりがんばらなくても登れる山へ、ということで、新幹線からも良く見える安達太良山を目指しました。
 どうやらかなりの標高までスキー場のゴンドラで到達できるらしい・・・。でも首都圏から近いため、大勢の人が頂上への列をなすらしい・・・。ということはわかったので、前日の夜に駐車場まで行って、翌朝一番で登ろうということにしました。
 さて、どうして頂上まで行かなかったのでしょうか?
 今回の記録の重要な点は最後の方に書いてありますのでお急ぎの方はそちらを御覧下さい。
 
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 正面に見えるピークから少し右にゴンドラの頂上駅があります。ここから普通の登山ルートについては多くの皆さんのHPにありますので譲ることとします。

 まだ梅雨が明けておらず、新潟・福島豪雨をもたらした前線はこの日南下して、福井で大きな被害を出しました。山麓駐車場で走るテントで一夜を過ごしましたが、風と雨が断続的に強く、風に対して横向きにすると激しく揺れます。そのため風上に向けて駐車しました。こうしますとガス吸収式冷蔵庫の火が吹き消えることもありません。午前4時頃まではこの状態でしたが5時ころに雨は止みました。
 雨は止みましたが、風は残って時折強く吹いています。問題なさそうですが、リフトやゴンドラは強風だと運休になるのが普通です。
 近くにやってきた通いなれているような方に、この程度の風でゴンドラは運行するのか尋ねたところ、その方達はゴンドラのことは良く分からないが、くろがね温泉小屋経由で登るということでしたので、私たちもそのコースをとることにしました。ゴンドラを使った「右回り」だと4時間くらいの行程ですが、ゴンドラを使わない左回りだと6時間近くを要するようです。

 正面の温泉小屋方面への道を行きます→
 
 緑の深い樹林帯を、運搬道をショートカットしながら高度を上げて行きます。途中でゴンドラの路線を一望できる展望台があります。やはり定刻に(この日は8時)なっても運行は見合わせているようです。
 さらに安達太良山頂上方面を見ると雲の中で、しかも激しく流れています。
 また運搬道と合流して勢至平のお花畑を行くと、峰の辻へ直接至るルートを左に分けます。右のくろがね温泉小屋経由で進みます。
 霧(雲)の下の縁は徐々に高度を上げているような気もしますが、小屋を過ぎると次第に霧の中を歩くようになりました。
 このあとガレ場の登りがしばらく続きます。霧で視界が30mほどに落ちてきましたが、赤丸で岩にマークしてありますので何とか次の道標があるところに着きました。
 ここは峰の辻という地点のようです。「ようです」というのは自信が持てないからです。
 この標識には方向板が3つあるようですが、明確に読めるのは「牛の背経由安達太良山頂」だけで、くろがね小屋はシルエットで白色は消失。もう一枚は(勢至平の)勢の字しか読めません。地形図によるとここは十字路のはずです。なのに方向は3つで、うち2枚はほぼ同方向を指しています。
 ここで地形図と方角と高度を照合して進む方向を確認すれば良かったのですが、「頂上」の文字だけに従って、前を行く人影に付いて行くこととしました。風雨のためそのあとルートの確認をすることはありませんでした。

 この後進むにつれて風が強くなり、ついに自立することが困難なほどになりました。湿度が高すぎるため衣類は濡れてゆきます。小さな岩陰で雨具着用となりました。私は過去にも四つんばいにならないと進めなくて、石粒が飛んで来るような状況は経験していましたが、今回はルート上の位置が目標物に乏しく、完全確定できないのと、私より体重の軽いパートナーはもっと大変でしたのでここで引き返すことを決めました。
 帰宅してから高度の記録と地形の記憶から判断して、安達太良山頂へのルートを標高1600m地点まで進んだものと思われます。
 ここまでの道標でも感じていたのですが、他の山の道標にあるような、次の地点までの距離が記載されていません。自分の現在地を知ることは地形図使用時の最重要事項ですが、コースを見渡すことが出来ない場合に外部からもらう情報の一つである道標はとても大切です。
 私がいつも使用しているナビゲーション用具は高度計と磁石内蔵の腕時計と2万5千分の1地形図です。一応GPSも持ち歩いていますが、樹林帯では効かないのと、測定開始から確定まで結構時間がかかるため普段は使いません。またGPSは緯度経度のメッシュと連動しないと意味がありませんので地形図の用意が間に合わないこともあります。
 さて、このあと下山途中で大勢の登ってくる人たちに会いました。多分ゴンドラが運休でこちらに回った、私たちみたいな人も多いのでしょうが、小学6年の団体数十人もいました、また雨具など持たないといった感じの方も多く居ました。なるべくこの先の状態を伝えるようにしましたが、皆さんが無事に下山したことを願っています。
 その無事の確立を高めるため、道標についてはきちんと整備をお願いしたいと感じた次第です。また、特にガスによる視界不良で迷いやすい地点については何らかのマーキングがあってもよろしいのではないでしょうか。気軽に登る人が多い山ほど配慮が必要と感じました。
 本来は山歩きというものは自己責任で完結されるべきと思いますので、おせっかいに過ぎると悪循環に陥るかもしれませんが、他の地域と比べるともう少しお願いしたい所です。

 ともあれ、また晴れた時にぐるっと一回りを目指そうと思います。安全に!楽しく!

そして秋。疑問が解決しました。 2004.9.24
 9月の連休の谷間金曜日。でもあまり天気がよくありません。今回も強風でゴンドラが止まってしまわないでしょうか心配です。夏山の混雑ピークは過ぎていますので人はあまり多くないことを期待します。岩手から福島までの高速では断続的な雨もようでした。予報では福島では「会津方面で晴れ間も見える」です。安達太良は会津と中通りの間にありますので少し期待してゴンドラ乗り場まで来ますと、今日は動いていました! 風で止まらないうちに急いで乗り込みます。
 スキー場のゲレンデは、今は60万本のコスモスで埋め尽くされています。画面の上端にゴンドラが往復しているのが見えます。 高度を上げてゆくと雲の切れ間に入って行きます。頂上駅に着くと家族連れが何組かいました。登山客は半分くらいでしょうか。
 頂上まで約60分でしたが、最初の部分は木道があるものの、石楠花や松類が覆いかぶさるように繁っていてすれ違いが困難です。自然保護のために剪定しないで放っておくのでしょうか?もちろん自然保護も大事ですが、歩道として設定してある以上、区切りをつけて歩行に障害になる部分は広げるべきでしょう。道しるべの管理とともに、少し至らない面を感じます。
 ゆるい登りからやや急になって、鉄山方面が見えてきました。途中で学校登山の6年生120人程とすれ違いましたが、その他は20人くらいしか会いませんでしたのでこの山域としては空いていたのではないでしょうか。
 霧のカーテンが閉じたり開いたりしているうちに、頂上のドームが現れました。
 前回に比べればやさしい風に吹かれながら頂上で記念写真を撮りたかったのですが、薄くて軽いデジタルカメラを置いておくほどには弱い風ではありませんでした。モデルも帽子が飛ばされないようにおさえています。

 さて、帰りは前回断念した峰の辻を回って下ります。霧の中で、どこまで進んだのかわからなかった部分を再踏査するのが目的の半分です。
 晴れた日に歩けばなんと言うことはないルートですが、前回は一度下りになる頂上直登ルートがわからないまま、登りの続く牛の背経由ルートに踏み込んでしまったのでした。

    (下の写真では手前が頂上直下の平坦地) 
←頂上から見た同ルート。
 牛の背は峰を越える風が非常に強く、前回はそこへ向かって登っていったため断念せざるを得なくなった。
 もし手前の頂上直登ルートをとっていれば風はさほど強くなく頂上直下までは進めたかもしれません。

 ↓ 峰の辻から見た頂上。
 直登ルートは一度短い下りとなり、小川を渡ります。2万5千分の1地形図に照らして見ると、確かに高度差にして12mほどいったん下がっているのがわかります。この詳細な部分を頭に入れておくか、風雨の中でも地形図と照合できれば、前回の間違いは発生しなかったのかもしれません。
 山歩きをしていて道に迷う危険はいつでも潜んでいます。私の経験上一番やばかったのは残雪期の樹林帯です。夏道をたどって登ってゆくと、数メートルの幅の残雪を越える所が何度か現れて、やがて残雪ですっかり道が隠れてしまいます。数十メートル先にまた夏道が現れるのですが、枝にリボンでもついていないと続きがわかりません。再度残雪に乗って、今度は数百メートル、好きなところを選んで歩けるので一見楽なのですが、そのまま頂上などの目的地に至ればよいものの、またまた雪が消えてしまったりします。消えたところに夏道は無く、猛烈な藪があるのみです。探しても続きの夏道は見えません。仕方が無い、もどろうか・・・。 戻る道がわからなくなってしまいました。大勢が残雪の上をたどるようなルートでは、雨でも降っていない限り多少なりとも踏み跡があるのでそこを戻ればいいのですが、硬くなった雪の上に、自分の踏み跡を見つけるのは困難です。周りは360度同じような樹林帯で見通しが利かない。おまけに傾斜が少ないとなると高度計や磁石で現在地をつかむのも困難です。GPSも空の見える部分が小さいと衛星捕捉ができません。 同じルートを戻る予定であればマーキングしながら来るか、水糸などを置いて来るのですが、通り抜け予定でそれも無いとなるとあせってしまいます。小休止し、深呼吸をしてもう一度地形図と相談。やってきたと思われる方向へ、夏道の切れ目を探しながら戻ります。真っ直ぐではなく左右に蛇行しながら探してやっと見つけることができました。

 峰の辻からは、くろがね小屋には寄らず、勢至平にまっすぐ降りるルートを取りました。前回通らなかったので選んだのですが、小屋を回ったほうが足元も歩きやすく景色も良いなと思いました。かわいいどんぐりや、エゾオヤマリンドウが里よりも少し早い秋を感じさせてくれました。