「夏の八幡平を空から眺めよう」  2016.08.06
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 2016年は、残雪期の5月末と、開花期の7月に、案内で八幡平に来ましたが、3回目は自分で目的を持って訪れました。ドローンでの空撮です。山へ登る目的のかなりの部分を占めるのが、高所からの眺めが良いこと という方は多いのではないでしょうか。もちろん私もそうですが、山の上に立つと麓にかけての景色は大変によく見えて、普段の視界から全く別の世界へ連れて行ってくれます。 でも八幡平のようななだらかな山では、麓の眺望よりも遊歩道の周りに現れる湖沼や池塘・湿原といった場所が、目的とする景色の中でも大きな割合を占めています。(私の場合ですが)
 
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 (申し訳ありませんが、最初は苦言です)
 いつものように見返峠駐車場で環境整備協力金の意味合いの駐車場料金を払って、山頂方面に向かう遊歩道に入ります。何年か前から左のような看板が立っています。いわく「熊も狐もいます ペット同伴は危険です」とのことです。少し前まではペットの足に草の種が付いて来て、それが落ちて発芽して高山の植物生態系を乱すから、ペットは連れ込んではいけない…といった主張があったのではないでしょうか。議論はあるようですが私は人の靴のほうがはるかに大きな影響を与えそうだと思います。
 今回の看板にある野生生物との関係はどうでしょうか。仮に熊がいたとして、人や犬を恐れて遠ざかるのが一般的な生態です。もしその熊が襲い来る場合、人よりも犬のほうが先に気が付いて怯えるなり吠えるなりして、人にとっては安全ではないでしょうか。ペットがいたから熊が逆切れして襲い掛かるというのがこの看板の主張でしょうか?どうも後からとって付けた、ペット排除のための屁理屈のように思えるのですがいかがでしょうか。公園管理者は、権威を振りかざしてわけのわからない規則を利用者に押し付けて利用しにくくするのが仕事ではないはずです。
 さて、気を取り直して山頂への遊歩道(石畳)を進んで行きます。一か月ほど前に来た時よりも花の種類が秋の装いに近づいています。
 八幡沼とガマ沼の中間点にやってきました。それぞれの沼に向けて木製の展望台があり、やってきたハイカーは殆ど一休みして、記念写真を撮ってゆきます。展望台からの眺めはもちろん素晴らしいのですが、あと数十メートル視点を上にあげることが出来れば、湖沼をもっと広く把握できるはずです。さらに横移動もできれば、遊歩道・登山道沿いにしか見られない景色の外の、知られざる沼や池塘や湿原を眺められるかもしれません。
 上の写真は地上から、右の写真は上空十数メートルからの物です。右側の遊歩道を右上に進むと頂上方面です。
 このあともっと高度を上げて移動してゆきます。以下アップする写真はフルハイビジョンで撮影した動画から切り出したものです。
 左写真、下の沼はガマ沼のすぐ西隣にありますが、遊歩道からの観察はできません。しいて見るとすれば残雪期に接近することはできますが、雪の上を歩ける季節には、沼もほとんど雪に覆われていて、このような水面や色合いや水際の曲線などを目にすることはできません。地形図では大雑把に沼・池であることはわかりますが、もちろん詳細はわかりません。また最近はweb上で公開されている地図を、航空写真に切り替えて見られるところが多くありますが(GoogleマップやYahoo地図)、現時点でこの区域の写真はGoogleでは冬の装いで雪だらけ、Yahooでは大縮尺の物しか見られません。
 右写真は、中央上部が鏡沼、その右二つが合わせてメガネ沼です。この三つの沼は遊歩道から間近に眺めることができます。また近年、鏡沼の雪解けシーズンに、沼の中央に雪の丘が残り、周囲を青い虹彩のように雪解け水が取り囲む状態になることから「ドラゴン・ブルーアイ」と何方かが名付けて評判になったということです。たまたまこの年の春に訪れた際に撮影したビデオからその状況を切り出してみましたので下の写真をご覧ください。これを上空から眺めればまさに青い瞳に見えるのかもしれません。また春季にも撮影に来たいものです。

時々霧が流れてきますが、このあたりは乱気流も無く安定して飛行できました。転回してガマ沼方面に戻ります。
 左の写真で、ガマ沼上空に戻ってきました。白く見えるところが木製デッキの展望台2カ所です。
 下の写真では左下がガマ沼です。中央のあたりに湿原と池塘群が見えます。遊歩道は右上から左横に向かって伸びていますが、この池塘群にはお目にかかることができません。その存在も知りませんでした。地形図でも表現されてはいません。
 このような発見や別の視点から景色を楽しむために、空撮可能なドローンを使いまじめました。もしこのような装置が無ければ、お金を貯めてヘリコプターを借り上げて八幡平の空撮をしたいな〜などと考えることもありましたので、だいぶ費用を節約することができました。
 八幡沼の方に向かいます。右写真の中央から少し右上に、山小屋の陵雲荘が見えます。
 沼の南岸に沿った遊歩道の上を反時計まわりに進みます。右下写真の沼も、遊歩道から離れていますので普通はお目にかかることができない所にあります。残雪期にクロスカントリースキーを履いて観察しに行ったことがありますが、やはりほとんど雪に覆われていますので、少し低いところに雪解け水がたまり始めているという感じの景色でした。
 遊歩道のすぐそばにある池塘も、上空から見ると形や配置がよくわかります。
 下の写真で、右上のほうに小さいピークがあるのが源太森です。



 ↓ 下の写真クリックで空撮動画です

 乱気流からの帰還!
 この日、3回目のフライトです。1回目は上記報告のとおりです。2回目は上昇開始直後にゆっくりしすぎたためか下降気流に巻き込まれて地面に戻ってきてしまいました。今度は最初に高度を上げにかかります。そして1回目では十分に観察できなかった源太森のあたりを目指します。再び八幡沼の上を、左下に陵雲荘を眺めながら東へ向かいます。
 八幡沼北岸の、遊歩道が水際に接しているあたりに来たところで、気流が激しく乱れて機体が左右に振られ、画面にプロペラが映り込むことが時々おこります。雨粒もレンズに付いて一部が白っぽくなったりもします。厳しい状態なので帰投させることにしました。

 右下の写真で、帰還地点のガマ沼展望台が見えてきました。
 下写真では、さらに着陸点に近づきましたが、向こうから激しい気流の乱れを含んだ霧(雲)がこちらにやってくるのが見えます。
 この機体の水平方向の速度は時速40km近く出せますが、垂直方向の上昇速度は、2.5m/s(=9km/h)ほどしか出ません。この値はあくまで気流の無い環境での性能なので、下降気流が2.5m/sよりも強くなると機体は下がり続けることになります。
 さて、左上の写真の位置まで来た所で、急に機体が下降を始めました。スロットルは上昇側に目一杯の操作をしているのですが、どんどん高度が下がってゆきます。左写真の上部にガマ沼の水面がほんの一筋の白線で見えますが、やがて見えなくなりました。下に八幡沼の水面が見えてきました。写真左下に赤く見えるのは機体の一部・プロペラが姿勢の変化により映り込んだものです。
 さらに高度は下がって、八幡沼の水面が近づいてきました! このまま気流が続けば水面に叩き付けられて操縦・帰還は不可能になってしまいます。しかし、気流も水面近くまでは下降を続けていないようで、やっと機体の下降は止まって、やがて元の高度まで回復することができました。

 下の写真クリックで、そのフライト記録です
 2カ所に四角い木製デッキの展望台が見えますが、左がガマ沼展望台、右が八幡沼展望台です。ガマ沼も真上から見るとその色彩の変化にドキッとします。写真で見たイエローストーン国立公園の湯沼にも少し似ています。
 さて、気流の乱れで撮影はここまでとして、秋田側に下りて後生掛温泉の遊歩道にやってきました。ここも機会があれば上空からその様子を見学したい場所です。右写真の大湯沼までは近道と、泥火山をめぐる回り道がありますが、両方を通って一周してきました。これから紅葉シーズンで観光客が増えることもあって、歩道の周りから伸びる草を刈る作業をしている方々がいました。ありがとうございます。

 下の写真は日本最大級の泥火山
 帰り道にはいつもの売店に立ち寄って名物の黒たまごをいただきます。半熟と完熟があります。今回は冷やしたトマトも売っていましたのでそれもいただきました。電気は来ていないようですが、建物の裏手で上流から沢水を引いて来て飲み物やトマトを冷やしているのでした。たまごも飲み物もトマトも、特別価格ではなくて平地と同様の普通の値段なのが良心的です。
 小さな池があって、オタマジャクシがたくさん泳いでいます。なんと、モリアオガエルだということです。この季節(撮影は8月上旬)にしては、そろそろ手足が出て来ても良い気がしますが、秋までに間に合うんでしょうか。心配してしまいました。
 遊歩道から後生掛温泉に戻り、少し時間と費用を節約して足湯だけいただきました。全身入浴すると体力を使うので運転で眠たくなりますが、足湯はそんな時にちょうど良いです。
 今回もホームグラウンドの八幡平で、ちょっと変わった一日を楽しんできました。