「鞍掛山と智恵の滝」    2015.06.20〜22
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 岩手山の南麓にポコンと出た鞍掛山。相の沢キャンプ場から初めて登って見ました。そのあとは、安比高原に一泊のあと、智恵の滝へ、こちらは2回目ですが行って見ました。 
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 鞍掛山は、富士山で言えば宝永山(火口)のような存在で、岩手山(2038m)の側火山です。 近くには小岩井農場や網張温泉・スキー場などもあり、盛岡市街からは一時間とかからずに麓までやってこられます。
 これまで岩手山には何度か登っていますが、鞍掛山へはいつでも行けそうという安心感から登ったことがありませんでした。
 近くには相の沢牧野が広がっていて、牛さんたちがたくさん居ます。また登山口から車でニ・三分の所には相の沢温泉お山の湯もあります。
 前日の夕方にふもとの相の沢キャンプ場/駐車場に到着して、場内を歩いて見たりします。一人だけ下山してきた人が居ましたが、その方の車が移動するとあとはキャンプ場も含めて誰も居なくなって、広大な駐車場に1台だけになりました。窓を網戸にして、ビールをいただきます。テレビの受信状況も良好です。
 こちらのキャンプ場は20年近く前に長男とその友達と一緒に乳頭山に登った帰りにキャンプしたことがありました。当時は場内まで車で入れて自由に使えたのですが、現在は車は進入禁止になっているようです。当時と変わったのは、入り口に日中は管理人のいる案内施設ができたことと、水洗トイレ棟ができたことでしょうか。林間の気持ちの良い草原で無料のキャンプ場はオススメですが、車から荷物を運ぶのは大変そうです。
 翌朝、まだ誰も登ったようすはありませんが、キャンプをしているパーティが2組ほどありました。一応低い山でも雨具や食料などに加え、GPS・熊よけ鈴、熊撃退スプレーなどを、初めてのところでもあるので装備して歩き始めます。6時前ですが、夏至の前日なので日は高くなっています。
 けっこう車が多く通った跡のある車道を、横方向から朝日を浴びながら東へ10分ほど行くと登山道の入り口です。車道は陸上自衛隊の岩手滝沢駐屯地の方へ延びています。岩手山に登っていた時も、たまに演習の砲撃音が聞こえてきたりすることもあります。
 ガイドマップにはこのコースは急登とあるのですが、一般的な登山道からすると、幅も広く、雨で掘れているわけでもなく、傾斜も緩やかで、とても歩きやすい道です。
 さしたる休憩も無しで、途中で西回りコースを合わせ、1時間ほどで頂上に到着しました。途中木々の間からすぐ向かいに岩手山の山肌が見えていたのですが、頂上に着く頃には、夏の晴れの日の特徴で、朝霧が次第に高度を上げてきて、霧に包まれてしまいました。でもしばらくたつと晴れると予想して、朝食をいただきながら待っていると、期待通りまたお日様が出てきました。でもすっきりと全天が晴れることはなさそうなので、食後の休憩を取ったあと、別コースから下山を始めました。


 左下写真は雲間から見えてきた岩手山頂上方面

遠方には高倉山も望めます
  
 鞍掛山に登ったときのGPSトラックデータをダウンロードしたので掲載します。
 地形図には表示が無いのですが、「滝沢市」の「市」の右下あたり、歩道の破線最下部あたりに、インフォメーションセンターと県道に沿って駐車場があります。そこからピンクの線に沿って反時計回りに周回してきました。
 登山道は変形した8の字のようになっていますが、最上部からは北東方向に岩手山の馬返し登山口へ行く道もあります。また、黒の破線は8の字の左上の2辺については記載されていませんが、実際には歩行経路のように登山道が現存します。頂上で出会った方がそちらから上って来ましたので、情報を聞いて歩いてみることにしました。頂上付近は急坂ですが、鞍部を過ぎると、ほとんど平らな気持ちの良い道が伸びていました。

 各地の樹林帯にある登山道の経路は、露岩の稜線登山道などと違って、地形図作成の限界でしょうか、現地の道路と離れているところが結構あります。
 これがもっとメジャーな山域でしたら、GPSの軌跡(出来れば往復して誤差を追い込んだ結果)を添付して、国土地理院に報告・現地調査・修正してもらうのが良いかも知れません。しかしおそらく、想像ですが、登山用GPSの普及によって国土地理院には修正依頼が殺到しているのではないでしょうか。航空測量によって調査できない樹林に隠れた道の調査には、職員が直接GPSを持って歩き回るしかないものと思われます。
 図の縦横のマス目は、私がカシミール上で入れて使っている、各辺ほぼ500メートルの距離目測用経緯線です。緯度が大きく違う地域では、東西間の距離(秒単位)を修正しなければなりません)
 頂上には三角点のほかに右の写真の「陸軍用地」の杭もありました。近くに自衛隊の駐屯地があることは記載しましたが、もしかするとその前身でこの辺りまでもが含まれていたのかもしれません。
 帰り道は、上記のように北側から上ってきた人に聞いて、予定を変更して大きく回って見ました。
 下の写真は頂上から西北西に直線距離で400mほどの鞍部にある標識で、三叉路になっています。
 そこからしばらくはなだらかな林の中の小道を行きます。キャンプ場から頂上まで直行するコースでは、利用者が多いためでしょうか、道幅が十分にありますが、こちらはマイナーなコースで、より森との一体感が楽しめます。オダマキが結構生えていました。あと提灯が連なったような花。名前を知らないのですが、秋になるとオレンジ色の丸い実がついたと思います。大木もあります。
 このコースは冬季にはクロスカントリースキーを楽しむ人たちが利用するようになっているようです。
 途中で8の字の結節点の三叉路を過ぎたあたりから、家族連れなどの登山客が多くなってきました。キャンプ場が近づくと、道はインフォメーションセンターへと、キャンプ場へに至る二つに分かれます。
 上り60分、休憩朝食40分、下り50分ほどで戻ってくることが出来ました。車で水分を補給して、おやつのゼリーなどもいただいて、次のところに向かいます。
 安比方面へ向かう途中で何箇所か立ち寄ってみます。こちらは春子谷地という湿原です。素敵な名前で、いつか来てみたかったのですが、観光のための駐車設備などは一切ありません。対向車が来たらどちらかが数百メートルバックしなければならない、細い未舗装の道を進んでゆきます。谷地が望めるところもありますが、待避所も無く、道は牧場への入り口柵で途切れることになり、Uターンするしかありません。
 あまり「せっこき」しないで、広い道路があるところから数百メートルなので歩いてくれば済むのですが、今回はここがメインではないので、道端から眺めただけで完了にします。湿原の雰囲気としては遠野市の荒川高原の奥にある猿ナントカ湿原に似た感じがしましたが、規模は相当大きいようです。
小岩井農場の北側になります
 次に立ち寄ったのはアルパカのいる「サラダファームの八幡平フラワーランド」です。これまでは立ち寄っても花類を売っている売店だけでしたが、今回は入園料500円でお花がたくさん咲いているエリアに入って見ました。花の写真は、自然界に野生で咲いている花とは違う感覚で見てしまうので、写真は1枚だけしか撮りませんでしたが、アルパカさんは、ペルーでたくさん見てなじみがあるので、近づいてさわって見ました。だいぶ毛が伸びてもじゃもじゃになっていましたが、間もなく羊のように刈り取るそうです。
 次に向かったのは・・・
 安比高原スキー場では冬期間にも、安比高原自然学校として、各種の日帰りツアーなどを開催しています。まだ参加したことはないのですが、その記事の中に「アセ沼湿原」とい場所が出てきました。スキー場の頂上 前森山から南西方向にあり、道がないので冬季限定でしかアプローチ出来ない所のようです。そこへスノーシューを履いて行った記録がありました。地形図を見ると、確かに湿原記号がありますが歩道は見当たりません。でも、よく見ると南の方からかなり近くまで行けそうな車道があるではないですか!
 この日は時間的に余裕がありましたので、大きなキャンピングカーで道路終点までたどり着けるかどうかわかりませんが、行って見ることにしました。あわよくば湿原まで行けるかも?
 この林道の入り口はこちらの「前森山集団農場」の看板がある付近です。これまで前を通ったことは数多くありますが、入って見たのは初めてです。けっこう戸数のある集落や集会施設もあります。個人宅が多いので写真は撮りませんでした。

 地形図に記載の通り、道は何度かターンを繰り返しながら標高差500m近い所まで快適に私たちを連れて行ってくれます。未舗装を覚悟していたのですが、意外にも終点まで全面舗装でした。所々草木が道を狭めているところはありますが、車を降りることなく通過できます。
 ちょうど地形図の終点の通りの場所で、道は突然途切れます。転回所がありますので、その端に車を止めてこの日の昼食にします。
  舗装道路は無くなりましたが、もう少し先まで山を切り開いて道路を作ろうとしたあとが見えますので、昼食の後に歩いて奥へ進んで見ました。舗装終点から200mほどもあるでしょうか。


左上の写真は舗装終点から見た奥のようす。
上の写真は切り崩した山肌。この山が火山であることがわかります。
左の写真は最奥の工事終了部分。
左下写真は、最奥部から振り返ったところ
下の写真はアセ湿原方向を見たところ。果てしない笹藪と雑木林が続いています。
 この道がどのような経過で途中までの工事になったのかはわかりませんが、秘境への入り口である、ワクワク感が漂います。いつか機会があったら完全装備をして(ナビゲーションと熊対策)、湿原までたどり着いてみたいものです。
 なお、地形図や看板には湿原ではなく「アセ沼」(川)などの表記になっています。もしかすると以前は水面のある池塘があったのかもしれませんが、草原化が進んで、地形図上では水面の記載が無くなったのかもしれません。


下の写真は終点付近から岩手山を望む 標高1000mを超えているので見晴らしもよいです。
右下の写真は林道終点付近にある多分 取水する為の設備のようです。
 この日は午後から天気の崩れるところがありそうなので、智恵の滝へ行くのは明日に回します。安比のホテルの前を通って、いつもの奥の牧場(まきば)にやってきました。撮影は6月21日ですので、高原ではまだ躑躅が多く咲いています。そして真夏になると一面に咲きひろがるヤナギランが、いくつか咲き始めているのをみつけました。わらびも採れるのですが、すこし時期が遅いので少量だけです。
 しばらく池塘の間を散策したあと、中の牧場、ぶなの駅前広場に戻って来て、夕焼けを眺めながら夕食にします。
 翌朝は見事な快晴です。でもこの時期、昨日と同様に霧が上がってくるかも知れません。早めに朝食と準備をしたあと、太平洋と日本海へ注ぎ分ける分水嶺を越えて智恵の滝へ向かいます
 ・・・その前に、ぶなの駅の前に見慣れない気象観測施設らしいものが建っていました(2段下の写真)。 説明文を要約すると次のようになります。

 ここから西方5kmほどの安比岳(地形図)付近にはクリーンエネルギーである地熱発電資源が見込まれるが、開発するには環境影響評価(環境アセスメント)が必要で、現地は冬季の観測が困難のため、電源も取れるこの場所で実施中。
 〜私の判断による解説も付加しています


↓ぶなの駅から見た中の牧場と、安比高原スキー場の主峰 前森山
 秋田市に注ぐ米代川の支流である兄川、その支流の袰部沢に沿って、下ってゆきます(といってもまだこちらは岩手県内です)と、だいぶ以前に袰部分校?があった所の建物が残っています(地形図位置)。当時の子供たちが描いたと思われるトトロの絵があります。ゆっくり観察したいとも思うのですが、天気の行方と日程から、先を目指します。ネット上にも何件か情報がありますので興味のある方は検索して見てください。
 智恵の滝までは、地元の方々の厚意で主な分岐点には案内板が立てられています。途中から道は未舗装になりますが、私のキャンピングカーでも何とか最後までたどり着ける幅はあります。
 その途中でキツネさんが現れました。まだ成獣までには至っておらず、少し痩せています。動画はこちら。
 キツネが作物を荒らしたり人を襲うということは聞きませんが、家禽を襲ったりはするかも知れません。でもこのキツネは現住住居からは遠く離れたところで、遠慮がちに車が通りかかるのを待っているみたいなので、イケナイこととは思いつつ、帰り道にもまた現れた(動画)ので、少しだけ残ったパンをあげてしまいました。車から降りて見ると逃げ去るわけでもなく、かと行って急な動作をするとびっくりして距離を開けます。姿が違いますが動きは犬とそっくりです。
 滝へ行くために車で乗り入れられる最終地点は ぶな林の中ですが、転回・駐車するためのスペースがあります。がんばれば10台くらいは駐車可能でしょうか。私の車(幅2m、高さ3.1m、長さ5m)でも到達と駐車が可能でした。それよりも問題はそこへ行くまでの道が1車線で、すれ違いが出来ないところがかなり長いことです。右写真は帰りの下りですが、見通しが悪くて1車線のところもあります。また勾配もあるため、もしかすると路面状況によっては2WDではスリップするかもしれません。
 案内看板に従って歩いてゆけば特に迷うようなところはありません。車から30分ほどで智恵の滝の滝つぼ付近に到着します。
 歩道入り口の看板に「智恵の滝新歩道」とありますので、もしかすると地形図にある破線が旧道なのかもしれません。でも20年近く前に来たときにも、このあと現れる、滝つぼ直近の急斜面を下ったような気がしますので、だいぶ前から新道を利用するようになっていたのかもしれません。

 赤の折れ線はGPSの軌跡ですが、プロット間隔を距離で10mに設定してありますので、細かい曲線は描ききれない部分があり、また往路と復路では多少ずれて描かれている部分もありますが、樹林帯の中なのでほぼ正確なトレースかと思います。

 それにしても現在のGPSは優秀です。最初に買ったSONYのポータブルGPSは、当時のゲームボーイよりも大きく、地図は表示されないで緯度経度だけの情報でした。GPSアシストデータのダウンロードなどということは出来ず、常にコールドスタートで、必要数の衛星補足まで15分くらいかかるのが普通でした。しかも樹林帯ではほとんど機能せず、葉に隠されない空が全天の半分以上見えないと使えないという状態でした。

 地形図の崖地の記号は皆さんご存知かと思います。国土地理院では数年前にデジタル化を進める過程で要望事項を収集したことがあります。私も意見を申し上げて、崖地の記号を優先表示してあるために地形の把握が極端に困難になっていることが散見されるので、等高線も重複記載して欲しい旨要望しました。結果、現在は計曲線(2.5万分の一地形図では50m毎)だけが表示されるようになりました。左図で確認できますが、以前はこの計曲線も表示されていませんでした。もっと悪い例がこちらにありますが、こちらは鉱山の露天掘り跡です。改良前にはこの図の崖地記号に囲まれた部分は計曲線も全く表示されておらず、穴の深さも、おおよその形状も全く把握できないようなお粗末な状態でした。現時点でも穴の底の深さや傾斜方向は全くわかりません。更なる改良案としては、主曲線(2.5万分の一地形図では10m毎)も全て記載して、崖地記号を他の色にすればわかりやすいと考えます。
 何箇所か展望ポイントがあるみたいで案内板が幾つか立っていますが、滝つぼをめざしますので道は急な下り勾配になります。
 地形図の崖地記号の部分に入ると、一部土の斜面をトラバースする所もありますが、崩落していたり、滑り落ちそうな所には、地元の厚意で階段足場や梯子が設置されています。
 特に最後の谷底に至る部分では、下部が流されるためか、宙吊りの梯子とぶら下がるロープだけがあってバランスをとるのが大変です。

 滝の詳細をあまり撮影すると、これから行く方々の感慨を減らすおそれがありますので、さらっとにしました。


 左下写真は最後の梯子の上部から下を見たところです。
↓ 智恵の滝下部に至る最後の難所(動画)。うまく表示されない場合にはこちらをご覧ください
 車・人ともすれ違うことはなく、秘境智恵の滝を楽しんできました。