「種山ケ原」 2005.8.27
            2003  2010.01.04
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種山高原は北上高地の南の方にあって、宮沢賢治もよく通ったところです。童話や詩集にいくつか出てきます。我が家からですと一時間くらいで入り口に着きます。高原の中には星座の森キャンプ場(コテージ村もあり)や、国道沿いの道の駅「ぽらん」の近くには「遊林ランド種山」という入浴休憩展望施設もあります。
 私がはじめて種山へ行ったのは高校生の時。遠野まで列車。バスに乗り換え、小友町から五輪峠を越えて江刺市の米里へ。そこからまたバスでふもとの集落へ。終点から1時間ほど細い車道を縫ってやっと麓のキャンプ場に着いたのでした。ほとんどが未舗装で、今その道を通るとよくもまあこんなところにバスが走っていたと感心するような道です。
広いので全部のポイントは紹介できないのですが、2003の記録とあわせてご覧ください。
 
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 遊歩道は「遊林ランド種山」の駐車場から始まります。遊歩道とは言ってもメインルートは車道で、一般車は進入禁止になっているところですが、入り口にはごらんのような看板が・・・。
 車道だけを辿ってもつまらないので途中から東北自然歩道の登山道を行きます。結構広い幅に除草が行き渡っているのでゆるい傾斜の登山道をゆっくり歩いてゆきます。カラマツ林が主体の気持ちのよい道です。

 リビは走り回っていますが、上りでは暑くて舌を出して放熱しています。
 今回は頂上へは行かないで、以前少年自然の家があった辺りから、星座の森方向へ向かいます。そして遊歩道の幹線(車道)を戻る事にしました。周りにはすすきや萩が咲いて高原は秋の風情です。

岩肌のツル植物も紅葉がはじまっています。車道をショートカットして水辺の広場に出ました。リビは暑いので水を飲んだり流れに入ったりして涼んでいました。↓
 路面にはバッタさんがいっぱいいて、産卵の季節かな?と思ったのですが、写真のように羽が生えそろわずに飛べない、まだ脱皮回数が少なく成中になっていない固体が多いようです。まだ秋までに間があるのでその間に成長するのでしょうか。
 さて、2時間近く森の中を楽しんだ後は、遊林ランドのお風呂に入ります。カメラを持っていかなかったのが残念ですが、目の前が森の中で、森に面した窓が全開するようになっています。ですので半露天風呂に入っているような気持ち。傾いた夕日が湯船にあたり、泡風呂ではじける小さなしぶきが逆光に踊っています。
 湯上りに牛乳をいただき、屋内展望台から周りを眺めた後はキャンプ地に向かいます。
 ←わかりにくいのですがむこうの雲の間に種山のレーダードームが見えます。このおかげで岩手県内のほとんどの雨雲が把握できます。

 夕日が徐々に傾いて黄色からオレンジ色になってきました。我が家では周りを山で囲まれているため、真っ赤に熟れて沈む夕日というのは普通見ることが出来ません。 地平線が見渡せるような場所での特権なのですが、日没の後もずっと向こうの空の雲が真っ赤に焼けて行くのを見ることが出来ます。ビールと夕食をいただきながら、天然のプラネタリウムが始まるまでのショーをゆっくり楽しむことができました。

2003年の記録から
 立石と賢治の詩碑があるところを訪ねてみました。以前はただのはらっぱでしたが立派な東屋ができて、刈り払い整備もされているようです。ここへは林道を経由して近道でくることも出来ます。

 10年くらい前に「徒歩男」の長男と冬にクロスカントリースキーを履いてこの詩碑を訪れたことがありました。雪に埋もれていましたが、掻き落すと昔と変わらず、「雲にもってがれで無ぐなる・・・」の牧歌の文面が現れました。種山ヶ原は霧(雲)のかかりやすい所なので、刈っておいた牧草の場所がわからなくなってしまい、雲に持っていかれて無くなってしまう・・・というちょっとユーモラスな詩です。 碑にはありませんが、旋律も付けられています。
 遊林ランド前から見た種山の一部。→

 種山頂上近くにあるモナドノックス。↓

 野生の撫子

2010年1月 冬の種山高原へ
 2009-2010の冬は、奥羽山脈では11月に何十年ぶりかの早い雪が降って、安比高原スキー場はプレオープンしたものの、その後しばらく小雪が続き、そして12月中ごろからまた本格的に積もりだしました。
 北上高地にあるこちらの愛染山と土倉山(RO)も1月に入るとたっぷりと雪をまとっています。
 茨城別荘管理人は、近くの越路スキー場でスノーボードをするためにおろして、夫婦で種山に向かいます。道の駅種山ヶ原の向かいから姥石の集落に入り、牧舎のあるこの辺りに車を置きます。まだ雪が積もってから時間が経っていなかったので、除雪が完了しておらず、一部4WDでなければ走ることが出来ない状態の道でした。

 さて、前回のハイキングはNHK取材のお手伝いで安比温泉に向かったのですが、早い積雪にツボ足で悪戦苦闘でした。そのとき先行した別パーティーのスノーシューが良さそうでしたので、ウチでも真似をすることにしました。アルミパイプで楕円の輪を作って、そこにキャンバスを張った構造が多いのですが、プラスチックの一体成型の方が好みなので、MSR製のものを用意しました。妻用は、体重が軽いのでそれに見合ったジュニア用です。
 気温がまだ上がっていないのと、風がないため、木の枝に付いた雪がそのままです。ドライフラワーや、わかりにくいのですがうさぎの足跡も方々にあります。

 「新奥の細道」の標識があります。目標の立石と歌碑があるところまではほぼ半分です。

 向こうに茨城別荘管理人が滑っているスキー場が見えます。風に乗って音楽も聞こえてきます。↓
 木の枝には、樹氷のように針状の突起が付いています。
 待ち合わせ時間から逆算して、目的地までの到達は困難と判断して途中で戻ることとしました。
 帰りは少しですが下りなのと、トレースをたどりますので楽チンです。
 スノーシュー デビューは種山で楽しく過ごせました。


ハイビジョン動画もアップしてありますのでご覧ください。

冬の種山高原 〜クロスカントリースキーで
 再び、雪が深いうちにもう一度詩碑を目指しました。あまり傾斜の無い牧野や、冬期で通行止めの林道を進むには、クロスカントリースキーが適しています。
 車は除雪後の行き止まりスペースに止めて、すぐに歩き始められます。
 私が種山高原に通い始めた昭和40年代には既に詩碑はありましたが、その後青少年の家が頂上付近に出来て、何十年か経って廃止され、現在はその途中にキャビン村とキャンプ場が 出来ています。そのキャンプ場に至る手前から道を左にそれてハイキングコースに入ります。
 最初しばらくは積雪で車が通れない車道を行きます。カーブミラーや周辺の散策コース案内板があります。
 
 冬の野山を歩くと、かなりの確立でウサギの足跡があります。そんなにたくさん住んでいるのでしょうか?
 いつもの、カーブで吹き溜まりができる所 に「宮沢」という案内標識が立っています。「賢治の詩碑」と書かれた部分は雪の中に埋もれているものと思われます。
 ここから草原の所まで少し急な坂を上り、ゆるい下りを楽しみます。
 雪原で目標物が少なくなります。振り返ると種山頂上にあって、岩手県南部の大部分をカバーしているレーダードームが向こうに望まれます。




 なだらかな地形
で、進む方向を把握するため、今回は買い換えたGPSを持参・試験しました。
 機種はGARMINのetrex-Vista HCxです。今まで数機種のハンディGPS(もちろんカーナビは除く)を使用してきましたが、格段に進歩しています。
 磁石と高度計も内蔵していますので、別に磁石を参照しなくても、本体を振り向けただけで進行方向と距離がリアルタイムで表示されます。
 それから電池が24時間以上持つということで、過去の軌跡をずっと記録できるため、引き返すことが容易になります。
 この内容についてはあとで特集をする予定です。
 何百メートルか先に目標地点として設定した詩碑の近くにある東屋が見えてきました。

 最後に少し林と藪の中を通りますが、夏道がわからないので、GPSを見ながら広場にたどりつきました。
 雪をかぶった自然石のようにも見えますが、こちらが「牧歌」をフルコーラスで刻んだ詩碑(歌碑)です。
 スキー板を着けたままだと作業性が悪いので脱いでみましたが、足が相当雪にもぐります。 
 碑面を傷めないように注意して雪を掻きますが、再凍結した多層の雪質なのでなかなかはかどりません。
 数分間がんばって、やっと一部が出てきました。
 冬も春も夏も秋も、詩碑は種山ヶ原に座って、くもの流れを見つめています。
以下は詩碑面から読み取った「牧歌」です。 こちらは私の解釈、説明です。

牧歌

種山ヶ原の 雲の中で刈った草は
どごさが置いだが 忘れだ 雨ぁふる

種山ヶ原の せ高の芒あざみ
刈ってで置ぎわすれで 雨ぁふる

種山ヶ原の 置ぎわすれの草のたばは
どごがの長根で ぬれでる ぬれでる

種山ヶ原の 長嶺さ置いだ草は
雲に持ってがれで 無ぐなる

種山ヶ原の 長嶺の上の雲を
ぼっかげで見れば 無ぐなる
(基本的に、ひらがなの濁点は取り除いたものが方言ではない表現に近くなります)

種山ヶ原の 雲(霧)の中で刈った草は
何処に置いたのか 忘れた 雨は降る

種山ヶ原の 背の高い ススキ アザミを
刈る作業をしていたが、置き忘れて 雨は降る

種山ヶ原の 置き忘れた草の束は
何処かの長嶺で 濡れている 濡れている

種山ヶ原の 長嶺に置いた草は
雲に持っていかれて 無くなる

種山ヶ原の 長嶺の上の雲を
追いかけて見れば 無くなる


※ 長根と長嶺の二つの表現が出てきますが、なだらかな尾根や、細長いピークのことだと思われます。
※「 ぼっかける」というのは、「追いかける」です。他の変化形としては「ぼったでる」(=追い立てる)などがあります。


 この詩には賢治自身によりメロディが付けられていますが、演奏をYouTubeで探した所では、こちら↓にぴったりの演奏がありました。

動画でもご覧ください。