「草の湯 2014 残雪期」
                        2014.05.31
                   
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 草の湯にはこれまで何度と無くいっていますが、雪が無い季節が基本です。雪があるとまずアプローチの車道を詰めることが出来ず、数キロ以上のロスになります。雪の降り始めの季節に目指したことがありますが(内容はこちら)気温も低く、短時間に多量の積雪で危険にさらされる可能性もあります。
 逆に雪が消えかかる残雪期には、ちいさな花たちが迎えてくれて、入梅前のひと時、とても気持ちの良い歩行を楽しむことが出来ます。しかしここに一つの落とし穴があります。所々に雪が残る状態の登山道は、夏道が寸断されていますので、ヤブ漕ぎを繰り返して正規ルート(夏道)を発見するためのテクニックが必要になります。
 残雪期に目指す物好きも少ないとは思いますが、今後目指す方の参考になるよう、以下にその経過を記載します。
 
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 例年、多少の残雪があってもさほど迷うようなことなく草の湯にたどり着けるのは、6月の中旬(10日以降)になってからです。今回は5月31日と二週間も早い上に、昨冬は積雪量も多かったので残雪があるかもしれません。
 草の湯林道に入って袰部沢を最初は橋梁で渡りますが、次に右岸から左岸へ渡るところはコンクリートの道床を流れが覆っているところです。大雨の名残で土砂が堆積し、除けたあとはありますが水深がけっこうありそうです。
 本格的に通りやすくするには、下流に堆積した土砂をやや強力な(0.1m3〜)のバックホウで除去して、下流側の抵抗を少なくする必要があるのですが、そんなことを考えてもしょうがないので、ウチのコルドバンクスで通過が可能かどうか検討します。上流側から近づいて流れに枝を差し入れて最深部の水深を測ります。タイヤにあてがってみると、約半分程度です。吸気口よりはだいぶ浅いので、底に溜まった浮石も少なくL速であまりあおらないようにして通過成功することが出来ました。
 写真は帰路のものです。
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 林道入り口から3〜4km進んだ所で、かなりの残雪がありました。ある程度のスタック対応装備は積んでいますが、JAFは間違っても来られませんので、惰性を付けないで進入できる限界まで進んでみて走破はあきらめます。
 惰性をつければもっと進めるのですが、路面の左右の傾斜に流されて路外に落ちたり、腹ばいになってしまっては大変です。。
 まだ時間に余裕がありますので道端に駐車して昼食と、少し昼寝をしたあと歩き始めます。
 周囲の緑はだいぶ濃くなっているのですが、雪の下になっていた植物はまだ芽が出たばかりです。タラの芽もまだ食べごろのものが多くありましたので、翌日の夕食のてんぷらに2回出来そうなくらい採取できました。ふきのとうも少しだけ採りました。
 いろんな花を見かけるにはまだ少し早いのですが、キクザキイチゲが林床のあちこちに咲き始めています。薄紫が多いのですが、中には白花もあります。
 次第に雪の上を歩く区間が多くなって来ます。でも車道なので幅も十分にあり道を失うことはありません。
 それにしてもこの空の青さと新緑の鮮やかさはどうでしょうか。雪の白さとあわせて入梅前のすばらしい配色です。
 この時期の残雪の上には、千代紙のような模様が付いています。上の樹木が芽吹く際に、冬の間芽を守ってきた苞が落ちていろんな模様をなしています。でも緑の葉も少し混じっています。鳥や虫に食べられて落ちたのでしょうか。
 車道の歩行を50分ほどで、いつもは車を置く場所に到達しました。多分地熱発電の調査に使われたこのエリアは、舗装してあるため草も生えず、よく用途のわからないプールも変わらずに残っています。エネルギー危機回避のためにもうまく活用して欲しいと思います。
 ここから細い山道に入ります。
 旧道(今はほぼ廃道の登山道)とのT字路を左に曲がってゆるい上りにかかります。このあたりにもキクザキイチゲが咲いていますが、こんどはピンクに近い色の花がありました。このあと見かけたやや濃い紫色とあわせて4色楽しむことが出来ました。
 まもなく雪田が広がっていて夏道は隠れてしまいます。
 雪田からの出口(夏道の続き)を探しながら進むのですが、見落として雪田の上を奥に進んでしまいました。GPS上にはこの区間では正しい道の表示がありませんので、引き返すときのために歩いた軌跡を記録しながら進みます。(左下写真。下写真は帰路に見つけた正しい出口で画面右端)
 雪渓・雪田を越え、雪解け水で嵩の増した沢を渡りながら少し行くと湿原があり、湿性植物のお花畑が広がっています。
 ここは、初めて草の湯にやってきた20年以上前に、当時小学一年だった長男とテントを張って過ごしたところです。一応国立公園の区域からは外れています。夜中にトラツグミが不気味な声で時折鳴いたり、明け方には得体の知れない動物が駆け回る足音が響いたりしたのでした。私自身もこんな山奥でテント泊をしたのはそのときが初めてでした。


 歩道部分が特に水分が多く、他は柴類が以前より繁茂してきたようです。湿原も少しずつ姿を変えます。

 湿原の向こうには残雪の輝く八幡平の稜線、杣角山が見えます。
 咲いている花は主にエゾノリュウキンカと水芭蕉です。水芭蕉は登山道の脇にオバケみたいに大きくなった葉を良く見かけますが、左写真の花の大きさはわかりますでしょうか?
 答えは、左下画像にあるように指一本よりも小さな花です。
 湿地を慎重に進みますが、誰かがエキスパンドメタルを敷いてくれたり、端材を埋めてくれています。
 湿原を過ぎると、また樹林帯に入り雪が多く残っています。スノーブリッジが多く、穴が開いているところもあります。地図上のルートを目指しますが、ここでも不正確で、結局安定した雪田の上を詰めて、最後の数十メートルは笹薮を掻き分けて正規ルートに出ました。右下写真はその瞬間ですが中央の笹の影から今妻が出てくるところです。
 下の写真はルートを探して蛇行しながら進むところですが、黒い点線上を進んでいるはずが、夏道は見当たりません。
 歩道部分に入って50分ほどで草の湯に到着しました。早速妻は足湯、私は全身浴にします。温度はぬるめですが、火照って歩いてくるのでちょうど良い温度に感じます。
 草の湯の名のとおり、周囲の草や笹の葉が落ちたものが湯花と一緒になって浮いていますので、取り除いて入りますが、すぐに白く濁ります。沸き出口は数箇所ありますがどれも熱いというほどのところはありません。沢水が流れ込んで温度が下がりそうなところには石などを積んで防ぎます。
 自然の浴槽に浸かって青空を眺めるのは至福のひと時です。
 帰り道は、ヤブ漕ぎは無しで順調に・・・と行きたいのですが、雪渓がたちはだかります。やはりスノーブリッジの巣になっているので、雪の厚そうな部分を歩き始めたのですが、ズボッと踏み抜いて右足が落ちてしまいました。あまり深いところでもないので大丈夫でした。用心して二人離れて歩きます。
 あとは迷うところも無く、また湿原の花を楽しんだりタラの芽を摘みながら無事に戻ることが出来ました。
 往路ではたくさん開いていたキクザキイチゲですが、夕刻が近づいてくると今日の部はおしまいということで、花を閉じてしまいます。
 車でいつもの岩畑の湯(安比林業センター)に寄って今度は体をきれいにするための入浴をします。ここは静かな森の中にあって私好みの宿です。外にスキーシーズンに使うスノーモービルが置いてあって、少し興味があるので見学します。
 そのあと安比高原の中の牧場に移動して今夜の宿としました。
 この日も入梅前の青空がひろがりました。さらに奥のまきばに移動して池塘の間を巡ります。まだ早い花もありますが、いくつか見つけることができました。

 右下はアズマギクと、まだつぼみのマイヅルソウです。あと2週間もすると、スズランが咲き始め、ツツジ、オダマキ、ヤナギランと続いて行きます。

 今年も安比と草の湯を楽しんで来ることができました。