「除雪機遊び」  
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 3月になると山岳地帯にある観光道路では連休に間に合うように除雪が始まります。中でも大活躍するのが、ぐるぐる回る螺旋と羽根車を使って、遠くへ雪を飛ばすロータリー除雪機です。また青森や札幌などの大都市の道路除雪でもダンプカーと組み合わせて効率的に雪を取り除いてくれます。あの仕組みはどうなっているのか興味がありましたし、自分でも類似の機械をいじってみたいと思っていました。規模は全く違いますが家庭用の小型除雪機(ロータリー式)を連れてきました。 型番はホンダ HONDAの HS55 前期型です。

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1 2018.03.03 初めての除雪機
 正直に言って、当地では除雪機が必要なほど雪が積もることはあまり無いです。道路除雪もグレーダーで路側帯に押しのけることはありますが、ロータリー除雪機は歩道用のものが確保されているようですが本格稼働しているのは見たことがありません。
 それでも年に何度か積雪はあって、特に日陰などで凍結して氷盤になると危ないので、少しでも積もるとサッと押しのけて片付けてしまいます。手押し除雪で大変なのは、20cmを越えたり湿雪の時です。道路を横断して向こう側まで一気に押してゆくのが出来なくなります。何回かに分けて押しますが、機械力があれば楽ちんそうです。
 役に立つおもちゃということで、最小クラス(エンジン出力が5馬力)の中古機械を購入して、親戚から借りた軽トラックで運んできました。重さは90kgくらいですので、積み込みはフォークリフトでしてもらいましたが、下す際にはコンパネを斜めに荷台にかけて引きずりおろして大丈夫でした。 HONDAの HS55 という形式で、昭和60(1985)年頃の機械らしいです。
 
 ざっと観察したところでの構造です。走行はエンジン動力でキャタピラ(実は商品名。クローラーが一般名)で前後に移動できるようになっています。 グリップのところにレバーが二本立っているので、片方ずつ切ると左右に旋回できるのかと思っていましたが、そうではなく左右とも同時の前後しか作動しません。旋回は腕力でずらして行います。これが大きなクラスになると、走行は電動であったり、超信地旋回(左右のキャタピラを逆方向に回してその場で旋回)ができるようになっています。
 この機械は前進が3段、後退は1段ですが、諸元表を見ると後退のギア比は2速と3速の間くらいで、結構早く移動します。つまり、3速と後退は無負荷での移動用で、1速と2速だけが除雪作業時に使うようにできています。
 除雪機の劣化ではキャタピラがひび割れして切れたりすることが多いようですが、ゴム表面には若干ヒビがあるものの、中の強度部材であるコードは見えるほどでないので、まだわが家のような時々使う用途では大丈夫かと思います。
2 ソリの改良 そして交換
 次のシーズンに備えて、冬に使う器具は夏の間に整備を進めます。
 除雪機にはソリが付いています。用途は作業機構本体(ローター)が、地面に近づきすぎないように、路面との一定の距離を保つことです。機構的に、クローラーとの角度を変えて除雪高さを3段階に変えるられるようになっていますが、中間高さでソリが着地した状態で除雪高さが1cm位になります。
 通常は専用部品のソリが付いていますが、消耗したためか、アングル(山形鋼)で代用されています。でもこのままだと地面の突起物に当たって、作業に支障が出そうです。そこで純正部品と同じように前後に傾斜をつけてあげる改良を加えることにしました。
 サンダーで両端に切り欠きを入れて、ハンドバイスやスパナを使って曲げます。形的には純正部品と似たようなものとなりました。でも。ソリは氷や圧雪の上では滑りますが、新雪が積もったばかりの所では、路面にガリガリと引っかかってあまり良い状態ではありません。また除雪しないで手持ちで移動だけさせる際にも、この部分の滑りが良ければ楽になります。
 
 次の改良はこの部分を車輪で置き換えます。スノーモービルのキャリー台車用に用意して使わなかった固定キャスターΦ65がありましたので、それを取り付ける作業を行います。そのままではもちろん使えませんので、アダプターを鉄板で製作します。基本形状は山形鋼ですが、長さ80ミリ、厚さ4.5ミリ、短辺65ミリ、長辺80ミリ位のものを探しますが、意外にヤフオク上で見つけた鉄板の端材に問い合わせて、曲げ加工をして出品してもらって、調達出来ました。曲げ加工後で1枚200円×2枚+税+送料 です。これに穴開けと干渉部分の切除を施工して、塗装で完了です。
 取り付ける際には左右のステーを入れ替えて、除雪幅の外にはみ出ないようにします。

 これでエンジンをかけなくても、ハンドルを持ち上げて軽く移動できるようになりましたし、除雪作業時の不必要な抵抗を減らすことが出来ます。

2019.01.07シューターライナーの取付
 昨シーズンにいくらか稼働させてみて不都合を感じたのが、上記のスキーが引っかかることと、シューターに雪が目詰まりすることです。湿雪をやや早い走行速度で作業すると、シューターの根元から詰まり始めます。次第に雪の通過面積が少なくなって、最終的にはローターの部分まで全面閉塞してしまいます。
 基本的にはゆっくり動かすと詰まる率は小さいのですが、出来れば目詰まりは気にせずにじゃんじゃん掻き飛ばしたいところです。

 詰まり始める原因は、シューター(雪の通過経路)内面の剥離性が悪くなって、湿雪が付着するところにあります。
 この対策のために、様々なケミカル用品(雪付着防止スプレー)や、塗料が売られているようですが、キキメ期間が短かったり、思ったほど効果が出なかったり、すぐに剥がれるなど実用性に難があります。
 このこともメーカーではわかっているらしく、オプション部品としてシューター内壁にポリエチレン製(多分。違うかもしれません)のライナーを取り付けできるオプションがあるようです。でも私のHS55に適合するものは今のところ見つけられません。
 ↑ヤマハのライナー写真

 そこで例によって、身の回りのもので代用できる素材は無いか探し始めました。条件は次のようなものです。

1.付着性の少ない材質であること
2.加工と取り付け固定がしやすい厚みと元形状であること
3.安価で容易に入手できること

 この条件を完全に満たすものがありました。理科の実験等に使う、ポリ広口ビンです。各種プラスチック素材も販売されてはいますが、価格が高いものがほとんどです。このビンは2Lのもので、一本504円で購入できます。(掲載時点)
 長期間耐久性を考えるともっと厚い方が良いかもしれませんが、私は除雪業者ではないので、多分摩耗して穴が開くほどには使いません。
 まず、ローター側ハウジングの出口固定部の中に、ポリ瓶を輪切りにしたものを差し込んでみます。 なんと! これ以上ピッタリのサイズは無い!というほどに、うまくはまりました。固定部側としては長すぎるので、少し短くします。
 その固定側ライナーとうまく接触しながら機能するように、可動シューターの内面にもポリ瓶を切り開いて展開した物をタッピングビスで取り付けます。 切り開く作業には金属切断用サンダー(Φ100)で作業をします。サンダーは縁の仕上げにも使えます。
 2Lのポリ瓶合計3個で、図のような状態まで加工出来ましたが、不足な場合にはさらに上部にも設置予定です。

 
 次に少しエンジンに息継ぎが見られるようなので、簡単に出来る対応策として、点火プラグを交換します。型番等は調べてプラグ自体の準備は問題ないのですが、取り外すための工具が汎用のものではできません。なので作業範囲の自由度が高そうなプラグレンチ(京都機械工具製)を準備しなければなりませんでした。

 比較的消耗しやすい部品であるVベルトも傷んでいるようなので交換します。
 最初にプラスチック製のカバーを蝶ボルトを抜いて外します。
 中のベルトを見るともう少し使えそうではありますが、ひびが入って来ているので交換します。ベルトカバーを開けただけで交換が出来ればいいのですが、諸先輩の記録によると、オーガ部とエンジン部を分離する必要があるようです。

 そのほかにシューターを左右に振るためのウォームギアと、シューター出口を上下に作動させるためのワイヤーを取り外します。
 二つに分離するためには、接続部周囲にある10個のボルトを外します。側面は普通のスパナで外せますが、上面はソケットレンチを使う方が余計な部品を外す必要が無く、楽にできます。底面のボルトは、車体全体を壁に立てかけて作業する必要がありますが、除雪機としては多分最軽量なので、下に木片を挟んで楽にできます。
 なんとか二つに分離して、ベルトを逆方向に反らせてみると、やはりベルトは限界が近かったようです。
 ベルトは、走行用とオーガ回転用の二つがあります。走行用はA29です。HS55でも前期型と後期型では除雪用ベルトの長さが違うようで、最初は間違えて後期型用の物を購入したのですが、調べて適合するものを追加購入しました。前期型はB32、後期型はB35です。結局後期用のB35が余ってしまっているので、どなたか必要な方がいらっしゃいましたら差し上げます。
 ちなみに、動力伝達用のVベルトのA/B/C…は、伝達可能動力(馬力)の容量を示す規格で、後の数値は周長(インチ単位)です。規格と本数を組み合わせて、動力容量に対応した選定をするのが機械設計の基本です。
 後期型の記録にはベルトの外れ防止抑え板が報告されていますが、私の前期型にはそれは付属せず、ただベルトを架け替えるだけで交換は完了しました。

 あとは実際の除雪作業がうまく行くことを期待しています。


 

2019.02.12 シューターライナーの効果
 雪が積もりませんようにというおまじないで除雪機の整備改良を行ったにもかかわらず、今シーズン初めて15cmほど雪が積もってしまいました(実は試運転が出来るので喜んでいる)。
 手作業で除雪した方が早いような気もしますが、わざわざ除雪機を出動させます。エンジンプラグ交換の成果か、快調です。 そして昨シーズンにはこれが原因で作業がしょっちゅうストップした、シューターの雪詰まりですが、ライナーは十分にその機能を発揮してくれて、一度も詰まることなく作業を完了できました。一番下の丸筒ライナーが、固定しなかったためずれてきたので、後でねじ止め予定です。
 このあとは30cm位も積もってフル可動出来ると面白いです。
20190215 補完
 一番低い、ブロワーに近い部分に取り付けてあるライナーは、サイズがピッタリだったために、ただ嵌め込んだだけで使用していたところ、排出される雪の摩擦で上の方にずれてきました。飛び出して雪と一緒に捨ててしまわないように固定しておくことにします。
 シューターは左右に旋回設定できますが、その動きに支障が出ないような位置にネジを貫通させて本体とライナーを固定します。 簡単な方法としては外側からタッピングビスを打ち込むことも出来ますが、2枚の密着強度が出ないので、ナット締めにしましたが、締め付け作業がやや大変です。
 また今度は雪乞いをして成果を楽しみにします。