「掃除機なおし」  
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 掃除機はあまりむずかしい構造のものではありませんが、家電品の中では最も過酷な使用環境に置かれているのではないでしょうか。同じように見えても各メーカーで工夫のしどころが違ったりします。
 また、中には開発設計者が自分では掃除したことがないんじゃないかと思うような製品もあります。たとえばコードの巻き取り。平らなところに置いて巻き取りボタンを押して、プラグがぴったりと着くまで巻き取ることができて当たり前ですが、成功率が20%程度という製品も今まで使った中にはありました。これは毎日使う人には非常なストレスになります。開発をする人はまず自分で最初から最後まで掃除をやってみてから掃除機(に限らず製品)を作ってほしいものです。
 ウチではカーペットの部屋が多いため、吸い込みノズルはパワーブラシのものを使っています。タービンブラシといわれる、吸い込み負圧を利用してブラシを回転させるものもありますが、ごみつまりしやすくて力も弱いので購入しません。
 家庭用掃除機はすべて手元のリモコンで操作が可能になっています。リモコンから本体側には、パワーブラシへの給電と本体コントロール信号をあわせて3本の線があります。その部分の屈曲による故障が多く発生します。また、パワーブラシ周辺でも動きが激しいので断線することがよくあります。 さて、今回はどこでこわれたのでしょうか。
 
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 まだそんなに長く使ったつもりはないのですが、2台ある(1階と2階用)うちの1台が使用中に止まる症状が出ました。
 診察してみると、←写真の右端のホースを曲げたときに止まり、伸ばすと動きます。断線しかかっている症状です。
 まずは保証書を探します。1年以上は確実に使用していますが、3年位かと思われます。販売店の延長保証に入っていればタダで直してもらえます。探しましたが見つかりません。あったのはメーカーの1年だけの保証書です。
 とりあえず自分で修理できないかとねじを緩めてはみましたが、多少無理をしないと分解できないようになっているようです。ドライバーでこじった跡をかなり残さないと先に進めません。
 店に保証の記録が残っていないかと、会員カードとメーカー保証書を持参したところ、2003年の購入で、仮に3年の延長保証に入っていたとしても切れているとの事でした。修理に出すと技術料+部品代でたいていは1万円以上かかります。ホースとコントローラ一体部分を部品購入した場合の値段を聞くと、5000円から7000円くらいではないかとのこと。それだったら自分で壊すつもりで修理を試してみて、だめな場合に購入することとしました。
 手元操作スイッチの周りを力ずくでばらしてゆくと、コードとホースの接合部にたどりつきました。
 手元でくるくると角度が変わる部分がありますが、そこの構造はもしかして回転式接点リングがついているのかと思っていたのですが、そうではなくコードのたわみで変位を吸収しているだけでした。そうなるとそのたわむコードも怪しいのですが、初診の症状では可撓ホース部分が悪いようでしたので、まずテスターでどの状態で断線症状が出るのか試しました。本体側とスイッチ側にまたがる3本の区間をじっくり試すと、赤がホースをきつく曲げた時に導通が途切れます。
 導線の構造は意外でした。最初はホースの中に三芯のコードが貼り付けてあるのかと思っていたのですが、ホースがつぶれないように支えているスプリング状の螺旋コイル自体が導線になっているのでした。コイルは三条ねじになっています。「3条ねじ」というのは、3本の線を平行な間隔のまま、丸い筒状のものに一度に巻きつけて行った結果にできる螺旋のことです。輪切りにした断面を見た場合に3本の切り口が見えます。普通はねじ類は1条です。円筒径とピッチ(線の間隔)のバランスを調整するときに2条、3条と増やしてゆきます。

 修理方針ですが、ホースの不良部分が端に寄っているので、10センチほど詰めることにしました。
 カッターとニッパーで螺旋のホースを切断し、病巣部分をはがします。
 はがした内側を観察するとひびの入っている部分があります。繰り返しの屈曲により、導体のコイルが疲労硬化して断線したもののようです。又は内面の被覆に最初にひびが入り、湿気の侵入でコイルが錆びて腐食、断線になったのかも知れません。(右下写真)
 産業用機器であれば、本体側にも最低限の機能を盛り込んだスイッチをつけておくべきかと思いますが、メーカーとしては適度な買い替え需要を喚起しなければなりませんので、ちょうどよい時期に壊れるように作ってあるのでしょうか。ともあれ修理はタダで完了し、またしばらく働いてもらうことになりました。

掃除機なおし その2
 前回修理から2年ほど経過して、また動かなくなりました。今回の症状は、ノズルのパワーブラシだけが回って、吸引ブロワモータが回らないというものです。
 ブロワモータのスイッチに反応するかどうかを試したいのですが、パワーブラシの音がうるさくて確認ができません。吸引管を途中で外してパワーブラシが回らないようにしてから試してみました。
 するとメインスイッチに連動してカチカチとパワーリレーが作動する音はしているようです。
 蓋を開けて部品の状態や接続状況を点検してゆきます。

 パワーリレーが焼けたり接点が不良になっていることも考えられますが、見たところ焼けた様子や臭いにも異常は無いようです。回路基盤にも概観上の異常はありません。

 ブロワモーターに至る配線の異常が考えられましたので、点検しましたが折れや外れは見えません。残るのはモーター自体に原因があるということです。
 接触不良に備えて、接点回復スプレーを用意しましたが使いませんでした。

 家電品(単相100V)のモータにはカーボンブラシが付いていて、たいていは交換できるようになっています。
 この製品も交換が可能なようですのでブラシを外してみると、下の写真のように接触面の大部分が煤に覆われていて、一部分だけが接触したりしなかったりの状態のようです。
 この製品の説明書を隅まで見ましたが、部品交換の記述はありませんでしたので、以降の作業は自己責任になります。
 地元の家電店を見てもそのような部品を売っているはずもなく、通販で注文することとなりました。メール便で2〜3日でとどきます。価格は1050円(税込)+送料です。
 左2個が新品、右2個が外したものですが消耗度合いに差があります。
 仮にモーター全体を交換した場合は3800円のようです。回転子側の消耗が回復できない場合にはその選択もできます。新品を購入する場合に比べれば少しの工作努力で経費と資源が節約できます。



 
 交換作業は、プラモデルなどの工作に苦労しない程度の経験がある方でしたらさほど難しいものではありませんが、各部に無理がかからないように組み立てる必要があります。
 ともあれ、またこの掃除機君にもまたしばらくがんばってもらうこととなりました。

掃除機なおし その3
 今度は1階で使っていた日立製の掃除機の修理です。写真の左上が分解前の外装、右下が内部のモータをひっくり返したところです。
 症状は作動中に突然動かなくなったというものです。休止したり、ホースや接点をいじっても回復しません。ただ一度だけ回りかけましたが、その後はずっと沈黙にいたってしまいました。保証書を探しましたが延長保障には入っていませんでした。こうしてみると、掃除機は結構故障率が高いので、5年以上の保障に入っていた方がよいのかもしれません。
 以前の経験から、モーターのブラシ損耗の可能性もありますので、もしかして簡単にブラシだけ交換できないものかと外装を見ると、底に何やらメンテナンスハッチのようなものがあります。
 喜んであけてみると…残念ながらコードリールの回転を利用したダストパックのチリ落し機能に関連した部品のようでした。
 蓋を開けて制御基盤とモーターを点検します。モーターは振動・騒音対策のためか、スポンジなどのクッションでくるんだようになっていて、吸い込み部分は柔らかいゴムシールで紙パック部分に接続されています。
 ブラシを点検しましたが、まだ使用限度にはなっていません。どうやらモーターまで電力が届いていないようです。
 残る不良可能性箇所は、各所に断線が無いか、操作スイッチ基盤、主基盤 の3箇所です。
 ホースの本体側にはロータリーブラシが付いていて、何回転してもホースがねじれないようになっています。この機能は使う側にとっては、ねじれを戻す必要が無く、機械にとってもホースにかかるムリな力を緩和してくれて良い方式ですが、価格的には高くなるものと思いますので、やや上級機種でないと付いていません。
 対してホースの手元スイッチ側は、電線のたわみによってねじれを吸収する方式で、角度では300度くらいが可動範囲になります。もっとも両端が全周旋回する必要も無いのでこの辺が合理的なところです。
 
 ホースのグリップ部にあるスイッチ基盤から、本体の主基盤の端子までの間をテスターで道通検査しましたが大丈夫のようです。すると残る不良箇所は主基盤又は操作基盤ということになります。
 基盤については点検・修理とも出来ませんので、部品交換をしてみるほかありません。部品の入手も一般に販売されてはいないようです。修理外注すると、9000〜14000円くらいかかるようです。新品で購入すると2万円台前半


 そこで部品取りに使えるような同型機が入手できないかヤフオクでチェックするとありました。一応可動品のようです。価格は4600円+送料になりましたが、修理費の半額くらいで済む予定です。
 到着した品をそのまま数日使用したところ、また動かなくなりました。原因調査をすると今回はブラシの消耗のようでしたので、今まで使っていた機械からモーターの「心臓移植」を行いました。結果、今のところうまく動いています。

掃除機直し その4
 掃除機直しもたびたび行いますので、何台目かわからなくなりそうですが、製造番号からすると、今回は中古で部品取り用に購入した機械に、逆に故障した掃除機のモーターを移植して使っていたもののようです。
 この機械の後に1階用としては、新品でノズル幅が300ミリの後継機種を導入していましたので、この機械は2階で利用していました。
 主モーターが回らなくなりました。
 普通に消耗するカーボンブラシが短くなっていてそれが原因という、今回は割合単純な「故障」のようです。
 早速これまでと同様に部品を探しましたが、どちらの通販店でも適合するものは在庫切れになっています。やっと見つけた店では支払いが銀行振り込みで、確認・発送までしばらくかかりそうです。一旦休止して外出して用足しをしてきました。
 用足しの内容は、カーボンブラシの流用できる品が無いか探し歩くことです。
 掃除機用のカーボンブラシは大抵ホルダに入っていて、無理やりバラすと左写真のようになっています。左端がブラシ本体の消耗したものですが、これと類似形状の物があれば、加工取付して使おうと思ったわけです。電動工具の販売箇所を何カ所か回りましたが、残念ながら流用できるサイズの物はありませんでした。
 がっかりして戻って家でまた部品を探すと、さっきは在庫が無かった店で、2組の商品がアップされています!喜んでもう一台の掃除機用も併せて、2組を素早くGETし、翌日到着しました。

←写真は新しい部品(2個組)の先端部と基部です
 交換完了して、元通り正常使用できるようになりました。それにしても、このように割合頻繁に消耗する部品が、ネット上の一部の店でしか入手できないのはなぜでしょうか。さほど難しい作業でもないと思うのですが。
 根本的な解決策としては、モーターの形式を整流子を使わないものにできれば、もっと長持ちします。でも多分小型高出力であることのほか、電動機の特性に合致するものが無いのかもしれません。