木こりのまね  チェーンソーを使って
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 定年退職者等が「打ち込む」ことで多いのが家庭菜園、あるいは本格的な農業ではないでしょうか。 私の場合農業には不向きであると自分で思っています。なぜならこれまで小規模ながら作物を育ててきて、うまく行くのはまぐれの時だけ。又はよほど丈夫な作物の場合でした。結果現在でもうまく育っているのは果樹ではキウイフルーツと無花果、野菜ではキュウリとミニトマトくらいでしょうか。昨シーズン豊作だったジャガイモは初めてのことです。
 一方、私自身が小さいころから通っている親戚の山にある農地だった所には、現在は雑木が生い茂って高木が林立しています。子供たちも通って自然を楽しんできましたが、現在は孫たちを連れて行って、昆虫や両生類と親しんでいます。すこし荒れてきたので地主(従兄)の承諾を得て場内整備を始めました。
 冬場に適した自然相手の作業が林業です。木々の葉が落ちて見通しがきき、引っかからないので運搬も楽です。積雪地や下り斜面では運搬にかかる利点もあるようです。
 記録(写真)を撮り始めるのが遅かったので途中からの報告になります。

目次
1.チェーンソーの準備  
2.ソーチェーンの交換
3.栗の かかり木
4.用具の手入れ
5.けん引伐倒

1.チェーンソーの準備
 運動にはなるかもしれませんが、のこぎりでの手作業でははかどりませんのでチェーンソーを用意しました。最近の技術進歩(バッテリー容量の増)により、これまではエンジンや100v電源でしか駆動できなかったものが、バーサイズ450o程度まで、エンジン排気量42cc程度の能力を出せる、バッテリー駆動式のチェーンソーが普及してきました。
 写真は18vバッテリーで駆動できるバーサイズ250oの物です。切れ味は刃幅が狭くてスッと入っていくくらい良好です。
 練習を兼ねて細い木から始めて、だんだん太い木に挑戦です。木の切断面直径40cm程度になると、バーサイズ250oではギリギリで、負荷的にも時々リミッターが働く状態となりました。場内にはもっと太い木もあり、やや重いけれども40v電源でバーサイズ350oの物も用意しました。
 林業は危険な作業だという認識はありますので、保護ズボンやヘルメットも用意します。付帯設備で、クサビやトング、目立て用品も必要です。ただしエンジン式ではないのでイヤーマフ(防音カバー)は不要です。
 木を切り倒す作業を 伐倒 というそうです。枝払いの後に幹を短く切断する作業を 玉切り というようです。上記写真の玉切りは、写っている250oではなく、350oで行いました。目安は一人で転がしたり運搬できる程度にすることです。

2.チェーンソー刃の交換
 やや太めの伐倒・玉切用に準備したのが、マキタの MUC018 という機械で、使用バッテリーは1個で36V(40vmax)です。この前に出た機種も18v×2個で36vのモーターで作動しますが、資料を見るとその能力はかなり向上しているようです。
 エンジン式(40mlクラス)と比べても能力に遜色無く、メンテナンスが楽で騒音が小さいという長所があります。マキタではエンジン式の製造はやめたという情報です。ですが欠点もあり、バッテリーの充電が山中では困難なことです。また機器もまだ高額です。特にバッテリーの高容量の物は1個で3・4万円します。
 とはいえ、農業などを始めるにしてもそれなりの投資は必要なので我慢して出費することとしました。
  チェーンソーの刃(ソーチェーン)にも種類があります。 この機種には 25AP という刃が着きます。 他に MUC019 という機種で、刃に 80TXL というものが装着されていて、ボディーが青色のほぼ同一のものが同一価格で売られています。 カタログを見たところ、019が切断が早く、バッテリーの持ちがよいようですが、 018 の方がプロ用でなめらかな切り味で耐久性があるような記述がありましたので、018を購入しました。
 しかし、その後各種資料を見ていると019の方が高能力で実用的であることがわかってきました。
 018から019への買い替えも考えましたが、二戸市に行く機会がありましたので、東北でも随一の専門店に寄って相談しました。
 すると簡単な部品交換だけで 019 と同一の仕様に変更できるということがわかりましたので、その場で必要部品を購入してきました。
 左写真は上が 018 に装着の 25AP、下が 019 に装着の 80TXL です。
 購入した部品は、ガイドバー・ソーチェーン・駆動スプロケット の3点です。長さはこれまで350oを使ってみてもう少し長い物が欲しかったので、400oとしました。
 左が 018 純正の元のスプロケット、 右が 変更後の購入したスプロケットです。本体側にOリングが入っていて、外側にはE形止輪が付いています。慎重に外すことで、変形無く、リングの弾性限界を失わない範囲で脱着出来ました。
 新旧のガイドバーです。 80TXL 用では450oまでありますが、25APでは400oが最長です。流通店舗の関係であまり種類を増やしたくない所などでは25APのようですが、能力的・総合的に推奨できるのは80TXL ということのようです。

3.栗の かかり木
 「かかり木」とは林業用語で 伐倒途中で他の樹木等に引っ掛かって不安定な状態で止まった木のことをいうようです。
 Youtubeを見るとたくさんのかかり木処理事例が載っています。しかし、ほとんどが杉や檜の事例で、幹が直立した樹木の場合です。近くには同類の植林された物が多く林立して、それに倒れかかった対象木が引っ掛かるわけです。その処理の多くが、根元をひねることで先端の枝の架かりを外す方法です。また予防策としては伐倒方向を正確に選ぶことで架からないようにも出来ます。 
 これが広葉樹となると様子はだいぶ変わってきます。 まず、枝分かれが多く、重心の位置も時によって読みにくかったり、概ねの重心が割り出せたとしても、希望する伐倒方向であることは稀です。ウィンチ類で引くにしても、上部が枝分かれしていてはうまく作用点をとれません。

 ←左端切断面の下部に、切株の受け口が少し見えます。枝が支えて切断面がこんなに高い所に浮いてしまいました。一見、かかり木にはなっていないように見えますが、道をまたいで反対側にある松の木など(左下写真)にかなりの重量がかかっています。
 全体の重量からすると大きな割合ではないのですが、それでも架かられた枝はしなって、人力では対抗できない力がかかっています。下手に松の木を刈って、急に力が解放されたりすると、その後の挙動を予測するのは困難です。
 高所の枝を玉切りしたくても不安定で危険です。
  
 力がかかっていない枝を慎重に選んで切り取って移動に支障が無いように処置したあと、木の全体を回転させることにしました。ロープを投げて枝に掛けた後・・・
 車で引くと、面白いように木は回転して、高所にあった枝が低い所に移動し、玉切りしやすい状態となりました。あとは少しずつ先端から切り詰めて、重量を開放してやり、最後に根本付近を人力で運べる長さに玉切りして完了となります。 この切断面は40×50cm程度ありましたので、長さは40cm以下としました。もし栗の木の板を作ろうとする場合にはもっと長く切るのですが、重機を使った搬出が必要になります。今のところそのような予定はありません。

4.用具の手入れ
 

 少し前の状況ですが、雪が積もって池の水も全面結氷する冬の間にも、木こりは活躍して作業がはかどりました。でも用具の手入れも時々必要になります。

 

まずは刃先の研磨です。これまでのところ切れ味が悪くなったというわけでもないのですが、いずれは必要になる作業ですので事前に用具の準備と練習をしました。ヤスリは細い丸棒のものを使いますが、チェーン刃の形式によって径が違います。ウチの2台は3.2ミリと4.0ミリです。

 他の刃物でもそうですが、一番気を付ける必要があるのが砥石やヤスリを当てる角度です。勘でやって多めに削ることも可能ですが、メーカー指定の上下・左右方向の角度を出せるような器具があまり高くなく売られています。ヤスリの材質種類もダイヤモンドコーティングと普通の溝切のものがありますが、専門店のお勧めは普通のものでした。チェーンの材質はさほど硬いものではなく、簡単に削り出すことが出来ます。
 次に切断終了間際に、挟まれてしまったりしてチェーンが外れた場合の対処です。何とか取り出してもすぐに掛けなおして完了とはなりません。チェーンがねじれたりしては刃先以外のリンクに傷がついたり変形してしまうことが多く、ガイドバーとチェーンを取り外して軽く回してみても、引っ掛かってチェーンが傷んでいることがわかります。この変形して出っ張った部分を、デプス調製用のヤスリなどを使って削り取ります。軽く回るようにして完了です。
 玉切りしたものを移動させるのに、持ち手の長いトングを使います。買ったままの状態では継ぎ手がねじれて使いにくいので、軸を横に貫通する穴を開けてネジを通し、回らないようにしました。また爪先が樹皮に良くかかるように先端を研ぎました。取り扱いには注意が必要ですが、刃物は切れない方が無駄な力が入るので危険と言われます。
 

 こちらは手入れではありませんが、足回りの防護用品です。長靴は防滑スパイク付きで、つま先芯入りですが、そこ以外にも安全カバーを掛けて使います。

 

 他の脚部保護には、防護ズボンを履く場合と、チャプスを被せる場合がありますが、当初ズボンを使ってみたものの、着替えが面倒に感じて、少しの作業なら着替えなくても良いかな…と感じる場面がありました。間が悪ければ短時間でも事故は起こります。こまめに装着することが出来るチャプスに買い替えて使用しています。


5.けん引伐倒
 

「園地造成」区画の作業を進めます。もともとは水田が棚田状に広がっているうちの一段なのですが、数十年前に稲作はやめて躑躅(つつじ)を一面に植えてあったところです。その場所に雑木の他、松類の針葉樹が混交しています。
 園地にするには針葉樹は好みではないので「間伐」します。前段階として林床一面に広がっていた躑躅は、伸びすぎて立ち枯れたり日照不足で花も付かないので、一部の根を残して除去してあります。

 

 松の木も枝打ちをしたわけでもないようですが、下部の枝は枯れて、葉の付いた枝は上部の方だけで、相当な高さに成長しており、切断面の直径は30〜40cmの物がほとんどです。周囲の木に「かかり木」ならないように配慮する必要があります。基本的には伐倒の標準的な手順で方向を決めてそちらに倒すのですが、現場の木はそんな基本をあざ笑うように倒したい方向とは反対に傾いたものが大部分です。

 受け口をまず作って、追い口を切り込んだら、クサビを打って倒す… というのが基本のようですが、どう見てもクサビで傾きを逆方向に持って行けるほどの浅い偏心ではありません。なので、なるべく上部にロープを掛けて、伐倒方向に引いた状態で伐倒するという方針になります。 
 

 作業が困難なのは、上部にロープを掛ける作業です。また、せっかくかけたロープが下がってきても困ります。 枯れ枝の上をめがけて、細長い木を使ってそっと持ち上げたロープを掛けて、遠くのけん引拠点の方に伸ばします。

 器具はいろいろなものがありますが、チェーンブロックやレバーブロックは大概揚程が短い。長いものを特注するのも可能だが、重くで高価。チルホールやルーパーは良さそうだが、ワイヤーロープで重くて取り扱いが大変で高価。そこで探して見つけたのがローププーラーです。荷重フリーでは簡単に伸縮出来て、ロックすると相当なけん引力を出せます。ロープは組ひもなので、柔らかくて軽くて扱いが容易です。
 

 ラインは滑車を通してダブルにして使いますので、定格上は2t近く引けますがあまり無理ではない範囲にしておきます。できれば2方向から引いて伐倒方向を狭く規制したいところですが、用具が無いのと手間がかかりすぎるので1方向に引きます。

 池の中に島が3個ある別段の田んぼ跡(左下写真)には、凍結期に橋を架けてあり渡るとドキドキします。前述の園地内は針葉樹はほぼ伐倒して、玉切りした幹や枝葉の片づけが残っています。

・・・つづく