「安比の浮島 と めがね沼」 
2002.7.21 2003.7.5 2009.7.17 2020.06.13
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 「尾瀬の歌」(夏の想い出)の一節をおぼえていますか?あの歌の中に、浮島が出てきます。岩手では西和賀町湯田町の湯川沼にあり、映画「風の又三郎」(平成5年頃の作品)では子供たちが浮島に乗っかって水遊びをするシーンが出てきます。もし本物の浮島に乗ったとするとちょっと自然破壊が気になるところですが…。 私も湯川沼に行ってみたことがありますが、よく確認できませんでした。多分その形成には気の遠くなるような時間がかかっているのでしょう。 そして今回安比の山奥にある浮島を訪ねてみました。

 2020年までに計4回訪れましたが、下の方が新しい記録です。
 
 
2002.7.21 初回到達の記録
 車を置いた赤川堰堤の駐車場から15分程で最上段の堰堤に付きます。そこからは細い峰沿いの山道を1時間ほど登ることになります。


ギンリョウソウや石楠花の咲く道を進みます
 そして浮島のある沼に着くことができます。鳥のさえずりだけが響いています。足元にはかわいいモウセンゴケもたくさんいます。
手前の緑は陸地ではなく、浮島の一部です。 ↓

そこからさらに10分程進むと別の沼が現れます。
こちらは2つの沼が並んでいるのでメガネ沼と呼ばれています。同じ水が流れているのですが色合いが違います。 
   ↓低い方の沼
こちらは高い方の沼。鴨が遊んでいました。
帰りにまた浮島の沼でリビを押さえ込んで記念撮影です。
  
道端にあった野いちご。味も香りも普通のいちごのようです。
 安比高原、奥の牧場にはこの時期、ヤナギランが咲きそろっていました。夏もピークを過ぎると秋の気配が足早にやってきます。
 浮島沼への道は正確にしるしたガイドブック等は見当たりません。地元のペンションに宿泊すると案内してくれるところもあるそうです。2万5千分の一地形図を正確に読める方で、希望の方がいらっしゃいましたら、掲示板からご連絡いただければ参考ルートをお知らせします。
 

二回目来訪 2003.7.5 にも同地を訪ねました。この時はあいにくの天気でしたが霧の中で浮島との再会ができました。今回は沼の逆側の岸に寄っていました。
まだミツガシワが残っていました。左下写真の泡はモリアオガエルの卵を含むものです。

2009.07.17 安比の浮島へ  3回目の来訪
 安比高原へも毎年通っていますが、今年もくることができました。安比へ来た時に目指すところがいくつかあって、今年は浮島のある沼と、めがね沼を目指すことにしました。他には、安比温泉・安比湿原・草の湯・智恵の滝などに行くこともあります。
 まず、ホテル安比グランドタワーを見下ろすように、兄畑へ抜ける道を登ってゆきます。途中で左に曲がるとぶなの駅があります。
 ここには水洗トイレと給水設備がありますので、たいていの人は立ちよって行きます。横の草原でテントを張ることもできます。昼はここに管理人がいて、中の避難室(?)に入ることができますが、夜になると鍵を閉めて居なくなるようです。「避難所として利用できます」とは書いてあるのですが、ここ10年ほどは夜間に入れるようになっていたことはありません。だれかテントを昼から張っていれば開けておくのかもしれません。
 ぶなの駅から奥の牧場(おくのまきば)までは未舗装ですが、春先の洗掘が残っていなければ乗用車でも進むことができます。
 奥の牧場で昼食にします。今年はやなぎらんの開花が例年より早いみたいで、下のほうの花はしぼんでいます。
 しばらく池塘の間を散歩します。
 沼は高さを違えてたくさんありますが、ミツガシワが生えているところが一箇所です。タチギボウシ、ワタスゲ、モウセンゴケなどがいます。
 ミツガシワの花はすでに残っていません。6月ですとアズマギクもあります。
 また林道を進んで、いつもの赤川砂防ダムに当たった行き止まりの広場に車を置きます。このあとの説明図と、リンク先の地形図をあわせてご覧になると理解が進みやすいかと思います。
 広場には保護区域の案内板があって、その中にこれから目指す浮島やめがね沼が記されています。公式の資料でこれらが記載されているものは今のところ見たことがありません。
 過去2回の記録では、ガイド無しでたどり着くのは困難かもしれませんので、今回はなるべく地形図が読める方であればたどり着けるように説明をしてゆきます。

 以前のスタート地点は右地形図の 0 のところでした。ここから茶色点線の道を使っていたのですが、この道は多分 4 のところにある砂防ダム建設のために拓かれた作業車道だと思われます。年を追うごとに藪が深くなり、洗堀も深くなってきましたので、他に多分ショートカットする道があるはず・・・と見込んでトライしてみました。
 いままで歩いたいろんなところでガイドに案内してもらったことはありませんので、すべて調べた資料と地形図と勘で進んでゆきます。
 1 の駐車場から赤川の右岸に沿って小道を進みます。 2 のあたりから少し沢から離れるように藪を進みますと、0 から上ってくる旧車道に出会います。笹にピンクの測量用リボンが吊るしてあって、逆方向の帰り道でも迷わず入れるように誰かが配慮してくれています。
 このあたりまでは迷うことはないのですが、問題は 4 の砂防ダムを渡った後です。
(右岸と左岸の区別については、皆様ご存知のことと思いますが、下流に向かっての右左です。進行方向に対しての左右ではありませんのでご注意ください)

 水量が多い時だと渡渉が困難になりそうな堤の上を渡って左岸のコースに入ります。地形図で見る赤川のすぐ西の小さな尾根の上をたどれば良いのですが、その上に出るまでがわかりません。(私はわかっていますが、初めての人でガイドがいない場合)
 川を渡った後少しまっすぐ進んでから左に曲がって尾根に上がるのが通常のコースのようですが、それよりは砂防ダムから、水の引いた沢沿いに左岸を数十メートル遡行すると、正規ルートの踏み跡に出会うことができます(右下写真)。
 一度尾根道にたどり着けばあとは道に迷いそうなところは少なくなります。ただし、下りでは迷いやすくなりますので注意が必要です。常緑樹林帯ですので下草の踏み跡が無いところではどこが道なのかわかりにくくなります。倒木で迂回するところも何箇所かあります。実際帰り道にはルートファインディングに多少時間を費やしました。

 2箇所ほど傾斜がきつくなるところがありますが、おおむねゆるいのぼりを進みます。
 約1時間ほどで浮島のある沼に着きます (5) が、最初にこの奥にある眼鏡沼 (6) に向かいます。さらに15分ほどです。こちらは少し通行量が落ちて、覆いかぶさる枝葉も多くなりますので道迷い注意です。
 八幡平周辺には各所に沼や湿原が点在しますが、その成因も各種あります。頂上付近の八幡沼は7つの火口を秘めた火口湖です。がま沼や鏡沼もそうです。
 先ほど通ってきた奥のまきばの岩畑山はよくわかりません。別項の安比湿原等は高層湿原による池塘のようです。ではこのめがね沼や浮島沼はどうでしょうか。下の写真は途中に展望できた崩落地ですが、むき出しの山肌左よりに最近倒れたばかりの樹木が見えます。葉がまだ緑色をしています。たぶんこのあたりの沼は土砂崩れや断層によってできたものと思われます。青森県の12湖なども同じ成因です。
 私はあまり好きではないのですがギンリョウソウもあります。ツキヨタケではなかったのですが薄茶色のきのこもあります。
 さて二つの沼が少し高さを変えて並ぶめがね沼に着きました。道はここで行き止まりです。二つの色合いは微妙に違っていますが、溶解している金属イオンの種類によるのかもしれませんし、周辺樹木の映りこみもあるかもしれません。しばし山奥の静寂を味わいます。


 さて、帰り道にまた浮島のある沼に立ち寄ります。風に吹かれて手の届くところに寄って来ていないか期待していたのですが、往路と同じところに留まったままでした。
 島は3個あって、4畳、6畳、10畳くらいの大きさに見えます。大きな島は遠くに離れていました。こちらもしばらく静寂の中で自然の作った不思議な形を眺めます。
 沼の畔には水芭蕉の葉やミツガシワが生えているところがありますが、一株だけミツガシワの花が残っていました。この沼もやがては周囲の植物が中央まで押し寄せて湿原に変わってゆくのでしょう。
 数百年の定点観測をしてみたいものです。それは無理なので、CGでこのような植生環境の変化ををリアルに再現してくれる方はいらっしゃらないでしょうか?そのようなサイトや番組を訪ねてみたいと思います。
 今宵の宿はいつものぶなの駅の前なのですが、その前に少し下って、これもなじみの銭湯になった、安比林業センター・岩畑の湯に入りに行きます。
 宿泊施設もあるのですが、静かな環境で私好みです。冬はここから安比のゲレンデに滑り出すことができるようです。リンク先地図(ちず丸)は、舗装路も遊歩道も同じ線で引いてあるのでご注意ください。
 ちなみに、多分ですが、この泉元はその名前からして奥のまきばがある岩畑山の西に、ポンプ小屋みたいなものがありますので、そこから引いているのではないかと思います。


★ こちらの湯宿は、2019年頃に閉鎖されてしまいました。2020年時点で三菱マテリアルの地熱工事関係事務所として使われているようです。
 はじめは誰も居ませんでしたので、浴室内をパチリパチリと記録しました。サウナや水風呂といった設備もありますが、なんといっても大きなガラス越しに森の中に居ながら入っているような気持ちになれるのがこの温泉のいいところです。

 お風呂のあとはまたぶなの駅に戻って夕食にします。
外にテーブルと椅子を出して、夕映えと雲の流れを楽しみながらビールをいただきます。時々数十メートル先の草原を回ったりして、やなぎらんと前森山・西森山を眺めます。
 翌朝は霧の中でしたが、不思議と安心感があります。
 今年はもしかすると来れないかと思っていたホームグラウンド(といっても自宅からは3時間近くかかりますが)でゆったりとすごすことができました。この次はいつやってこられるでしょうか・・・。


2020.06.13 安比の浮島とめがね沼へ
 およそ11年ぶりになる浮島への道ですが、変わらず島は浮いているでしょうか?今回は上空からの眺めを期待してドローン持参で行きます。
 安比高原の中のまきばと奥の牧場を経由して赤川に築かれた何段もの砂防ダムが見える駐車場からいつもの通り歩き始めますが、その年によって道が雨で削られて凹凸が激しくなっていることもあり、今回は何とか通れる限界近くに荒れていました。車体の上下動で石にヒットしないように極低速で進みますが、登りの傾斜もあるため、4WDでなければこのサイズの車は侵入困難でした。他に来ていたのはジムニーが1台だけでした。
 歩き始めると、道は通る人が減ったためか、やぶが覆っている部分が多くなっていました。今回はドローンとともに、GPS−地図ソフトを使って軌跡を確認しながら進みますので、万一道を失っても、来たところへ戻ることができます。
 また、あまり参考にならないかもしれませんが、歩行動画「安比高原・めがね沼への道」もアップしていますのでご覧ください。
 これまでに来訪したのは7月だけでしたので、今回は一月ほど早く、水ばしょうもまだオバケになってはおらず、ツバメオモトも見ることができました。
 最上段の砂防ダムから直進する道は山菜採りの利用でしょうか、踏み跡がありますが、尾根にあがって浮島や眼鏡沼へのルートは難路になっています。経験と地形から判断して何度か戻ったりしてルートを確認しながら進みます。
 ビデオを撮ったり、位置確認をしたり、やぶの中のルートを探したりと並行して行いますので、やや時間がかかって、90分余りで眼鏡沼のほとりにつきました。(浮島は帰りに寄ります)上部にはまだ残雪の所が多く、道のように見えて道で無い所もたくさんあるので注意が必要です。
 この青緑色をした水面が何とも言えません。静寂の中にさざ波の立った部分が少しずつ移動して行きます。
 周囲の地形から判断して多分土砂崩れによる窪地に水がたまったものと思いますが、少し高さ変えて二つの沼が並んでいます。
 周囲は密林に囲まれていて、広く水面を見渡せるところは無いので、ぜひとも広く見渡したく思っていました。以前には小さく折りたためるゴムボートを持参しようかとも思っていたのですが、現在はドローンを使って上空から全体を把握したり、水面すれすれの様子も捉えられそうなので、今回は空撮にも挑みます。

 左画像はスマホのスクリーンショットなので半端ですが、往復の経路跡であまり差が無いのでほぼ正確なルートかと思います。左下の二つがめがね沼、その右上の小さい、ルートの右側が浮島沼です。右下の大きな青い半円は移動経路の垂直経過で、地形とは直接関係ありません。縦横のマス目は一目盛が500mに設定してあります。使用アプリは地図ロイド+山旅ロガー で、あらかじめ広範囲の2.5万分の一地形図をスマホに入れてあり(私の場合東北から中部までの全域)、圏外でも作動できます。歩行中は機内モードにして電池消耗を抑えます。

 2009年の記事にもルートを入れてありますが、それは地形から判断して記憶で入れたものでした。並べてみるとだいたい一致していますが、渡渉箇所の標高に若干ずれがあったりします。 唯一ルートが変わっているのが、左上の方で往路に渡渉後迂回した部分で、現状は道は消失してやぶになっており、現在のルートは沢筋左岸から直接、沢直近の尾根に上がるものです。ピンクのリボンが付いています。
 上の写真はドローンの空撮映像4Kから切り出したものですが、右側の沼が少し低い水面になります。
 ドローンのコントローラーの機能理解不足で、撮影した物が全て露出が1段オーバーしていました。撮影時点でゼブラパターンが広範囲に表示されましたので、どこかいじるところがあるはずだとは思っていながら使い方がわからずそのまま撮影してきました(今は不都合箇所を理解しました)。
 映像編集ソフトで四苦八苦しながら調整して、真っ白に見えた水面に色が戻ってきました。
 編集ソフトも単なる明るさやコントラストを変えるのではなく、輝度 という項目だけをいじるとうまく行くようです。彩度もいじってみましたが、副作用が多く出て、4K編集では時間もかかり、結果が良くありませんでした。
  めがね沼の空撮動画はこちらからご覧ください

 めがね沼からの復路に浮島へ寄る行程で歩きはじめますが、めがね沼の近くはまだ道が窪地を中心に雪に覆われている所が多く、歩きやすい方へ進むと藪に囲まれて出口が見えないということが度々あります。少し戻って遮る枝の少ない所を探して、正しい道を探しなおします。
 八幡平周辺では7月まで残雪による夏道の消失が続きます。完全に雪に覆われているのでしたらどこを歩いてもほぼ目的地につけるのですが、所々で道を失うという状態を繰り返すと、本当のやぶの中で進退窮まるということもあり得ますので要注意です。
 10分ほどで浮島のある沼に戻ってきました。以前はめがね沼への道から少しそれるのにほとんど藪は無かったのですが、現在は笹薮をかき分けないと沼のほとりにはたどり着けません。(2002年の状態はこちらのとおり)
 モウセンゴケなどが広がる藪の無い岸からは浮島が3個ほど見られますが、残念ながら対岸に寄っていて、つついて動かしてみる…ということは出来ません。その代わり、今回はドローンによる上空からの観察ができます。
 上写真は上空から俯瞰した浮島沼です。右下の青いものは私の背負っていたザックで、森の中ではではドローンの離発着基地になります。(地面は草が多くて羽根で草刈りをしてしまうため) 太陽が白い丸になって反射していますが、その右下の薄い丸はさざ波が立っているところです。下の写真でわかりますが、虹色のリングが、太陽の周りに見えて大気中の水分が上昇してきており、梅雨入りが近いことを知らせています。(実際この翌日に梅雨入りとなりました)
 上の写真はドローンで接近したところですが、まだモウセンゴケ等は伸びていなくて、水芭蕉だけが浮島の上と、近くの岸に咲いています。
 浮島沼の空撮動画はこちらからご覧ください。

 浮島沼の地上撮影動画はこちらからご覧ください
 安比高原奥のまきばに戻ってきました。木陰で沼のほとりの駐車スペースで昼食をいただいた後、散策します。春の花が真っ盛りです。レンゲツツジの朱色と巻雲のかかった碧空と色の対比が良いです。
 沼がたくさんありますが、いつもトンボは見かけるものの、今回初めての配色のトンボに出会いました。胴と尾の付け根が赤く、他は黒で、尾の途中に黄色い点があります。ネット上では種類を見つけられませんでした。やはり紙ベースの図鑑を見ないとマイナーな種類の生き物は特定するのが難しいようです。
 白いリンゴのような花を着けた木がありますが残念ながら実は有りません。ミツガシワはちょうど見頃でした。以前はミツガシワの生えた池は一つだけだった(上の写真)ような気がするのですが、次第に他の池でも(左写真)少数ながらミツガシワを見かけるようになりました。
 楽園で迷路のような池塘とお花畑をしばらく行き来して、とても幸せな気持ちになります。アズマギクに見送られて次に 中のまきばに向かいます。
 中のまきばには ぶなの駅があって洗面やトイレが利用できますので、今日はここで宿のスペースを借りることにします。夕日がだいぶ傾いてきて樹木の影が長くなってきました。先に一度麓に下りてお風呂をいただいてきます。以前は安代林業センターを利用できたのですが、残念ながら閉館になって現在は地熱発電所建設工事の企業で使っているようです。今回は綿帽子温泉あずみの湯です。駐車場にはコロナ禍のせいか、岩手のナンバーしか車がありませんでした。
 夕刻になってもまだワラビを採っている人や、これから写真を撮りにやってくる人など、けっこうお客さんがやってきますが、誰もさわいだりせずに静かにこちらの環境を楽しんでいます。二段下の写真に移っている車の方とお話させていただきましたが、四季を通して通ってきていて、一泊か二泊しながら、夜も焚火(もちろん直火ではなくスタンド使用)をしたり、炭火で焼き肉をしたり、本当にゆったりした時間を過ごしているということでした。達人です。この翌日から景観保持のための馬の放牧があるということでしたが、今年は見られませんでした。
 空撮動画はこちらから、
 歩行動画奥のまきばはこちらから、
 歩行動画中のまきばはこちらから  ご覧ください


この項 おわり