「焼山湯の沢 その3」 2008.07.05 
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 4年ぶりに野湯に入りに向かいました。今も変わらずあのお湯は湧き出ているでしょうか。山登りのトレーニングを特に行っていない立場としましては、だんだんきつくなってきそうなので、他の山域に出かけるときの参考にする意味もあります。以前のレポートと重複するところもありますがご了承ください。
 
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 スタートは例によって金曜の夜です。今回は八幡平の西南口から入るためにその経路上にあるPキャン適地に宿泊しました。宝仙湖周辺のトイレつきPは既報にもありますが、ダム下園地、ダム管理施設内、ダム近くのレストハウス横、そして少し上流のかもしか橋付近です。環境が最も良い(静かで夜間来場者が少なくトイレも充実)のはダム上部のすぐ横にあるPです。
 翌朝ダムの上を往復散歩しました。幅は440mあります。左下写真のゲート操作室から下までは高さ100m!だそうです。
 トイレは24h開いていて洗浄便座付きにリニューアルされています。照明は自動点灯です。
 ダム施設建屋の上部に「カリヨンの鐘」があって、自由に鳴らすことができます。近くには民家もないし、広大なダム湖面と山なみが広がっているだけですので、朝の6時に高らかに鳴らしてみました。…ですが、誰もいないわけではなくてダム管理所に宿泊の方がいらっしゃるようで、もしかするといつもより早く起こしたかもしれません。
 朝食のあと玉川沿いに北上し、分水嶺を越えた所にある大場谷地に立ち寄ります。以前は駐車場も遊歩道(木道)も無かったので、道端に停めて遠くから眺めるだけでしたが、下のパノラマ合成写真のように東屋もできています。
 以前の地形図にはここから今日の目的地である焼山湯ノ沢に向かう道がありましたが、最新版では消去されているようです。
 
 木道が細くなったところから奥に進みますと、朝露で少し濡れるのですがニッコウキスゲのお花畑がありました。 こんなに密度が高く咲いているところは初めてです。
 自然公園は保護も大事ですが、まったく人が近寄れないまま放置していては価値もわからないので、最低限のアプローチは確保して利用できるようにしたいものです。
 ここではたくさん咲いていましたが、夕方に立ち寄った黒谷地では、なぜか一本もこの花を見ることができませんでした。



 (ここから先のようすは、NHKおはよう日本「とれたてマイビデオ」のコーナーで、平成20年7月22日に放映された内容です。また「月刊とれたてマイビデオ」でも8月末に放送されました)
 歩行のスタートは後生掛温泉近くの公共駐車場です。ここには立派なトイレがありますが、利用時間が9時からですのであまり使う機会がありません。
 四季を通して湯治客や観光客でにぎわう後生掛温泉ですが、焼山経由玉川温泉までの登山道はその宿を通過するところから始まります。

(ここからの写真はビデオとスティル写真の切り替えをセッコキしたので、ハイビジョンビデオからの切り出しです)
 後生掛温泉には旅館部と湯治部があります。坂道を降りてゆくと受付があってそこで入浴だけ(400円)を申し込むこともできます。
 登山者は受付には寄らないでさらに下の大浴場入り口を目指します。大浴場の案内板の下に「焼山登山口」とあります。宿舎と浴場を結ぶ渡り廊下を横切るように登山道は続いています。廊下のカーペットに四角いマットが敷いてあります。「ここだけ土足OK」とありますので、それを踏んでドアを開け、宿の裏手に出ます。
 ここから森の中の小道を小さな花たちを愛でながら一時間ほど登ると国見台に着きます。振り返ると後生掛温泉の遊歩道にある大湯沼が見えます。天気はもやがかかっていて少し風もあり歩くには良い状態です。草露は付きません。

 舞鶴草・岩鏡・御前橘・アカモノ
 こちらは水芭蕉の大きくなった葉です。→
花の名残が右下写真です。

 大葉黄菫・三つ葉黄蓮
 さらに少しの登りで、もうせん峠に出て視界が開けます・・・がこの日は時折数百メートル先が見える程度でした。
 白山石楠花が群生していたり足元の三つ葉オウレンが透き通っています

 少しのアップダウンで焼山非難小屋に着きます。長男と1回、次女と1回こちらの小屋には泊まったことがあります。東北地方の山小屋の多くは「非難小屋」という分類で、管理人もいなければ寝具の備えもありません。もちろん食事も利用者が持参します。水もそのまま利用できるものは無くて、これも持参するか近くの沼の水を煮沸利用ということになります。持参する場合にはコースの両端(玉川と後生掛温泉)にある水のみ場から汲んで来る必要があります。
 鬼が城と呼ばれる旧火口の岩場を過ぎ、低くなった部分から白い湖(火口湖)の方へ旧道(跡)を進みます。今回は雨が少ないせいか水面が下がっていました。
 昭和・平成にも何年かに一度水蒸気爆発を起こしたり火山灰を降らせることのある活火山です。対岸からは噴気が昇っています。水蒸気爆発を起こしたのは左下写真の左端あたりです。

 昔はこのあたりで硫黄を採掘でもしていたのでしょうか、電柱が朽ちた跡があります。火口湖からの排水路に沿って北東に進みます。振り返ると玉川温泉に至る名残峠が見えます。
 
 硫黄地で木の生えない長尾根をしばらく進んで下りにかかります。
 前方谷底に目指す温泉が見えてきました。ここからやや急な尾根の下りになります。ガンコウランに登山道(旧作業道)は覆われそうになっています。ここでは人が通って「踏み荒らす」よりも植生の回復速度のほうが勝っているようです。それだけこの道を通る人が減ってきているのでしょうか。
 谷底には人工物の石垣が築いてあります。ここではどんな仕事をしていたのでしょうか。
この石垣のあたりでもいくらかあたたかいのですが、二つの沢を合わせたところから少し下流に行くと黄色に変色したところがあります。いくつかある温泉の湧き口の一つで、70度以上はありそうです。
 沢の水と混じってややぬるくなりますが、入浴には熱いので、手を入れてみながら下流へ適温のところを探して下ってゆきます。
 その年の降雨状況や訪れた季節、火山活動の状況によって温度が違うので毎回同じ場所で入浴するわけではありません。今年はこちらでお湯をいただきました。
 下の写真は湯船から下流の眺めです。
 周りを観察すると、火山の影響で形成された様々な色や形が興味を引きます。この山でも他の区域ではこのような形状や配色を観察できるところはありません。
 お風呂のあとはおにぎりで昼食。
 昼食のあとは少しだけ昼寝。
 暑過ぎず寒くも無く快適です。

 ここは標高1122mの極楽温泉です。
 帰りはベコ谷地経由で後生掛温泉に戻ります。初めてこの温泉にたどり着いた時のようすは活字化されていますのでサイト内をご覧ください。その時は逆周りでした。
 前回の通過から5年近くを経過して、その間に刈り払いが無かったものと思われます。道は笹薮に覆われていました。掻き分けながら進みます。時々前を行くパートナーを見失いそうになります。
★その後秋田県自然保護課にお尋ねしたところでは2008年8月下旬に地元の方の手でこのコースの刈り払いを予定しているとのことでした。これでまた来ることができます。ありがとうございます。
 「道なり」に進むだけであれば迷うことは少ないのですが、このコースには凸字型に曲がる分岐点があります。2万5千分の一地形図もここの詳細はたどりきれていません。
 左側が原図のまま、右の図中で赤い線がベコ谷地に至る実際の経路です。緑の線は北東の地熱井に至るものです。このように道が続いている地点であることを、覚えている人でなければここを迷わずに通過することは困難と思われます。

 しばらく藪を漕ぐと小さな湿原に出ます。逆方向からここまでたどってきたのでしょうか、地元の大学山岳部の朽ちた標柱が倒れていました。
 笹薮の間に次第に樹木が混じってくるようになります。足場は水の流れで掘れていますが、少し見通しが利くようになって楽になります。地熱発電所の音を左に聞きながらお風呂から70分ほどで発電所の敷地に到着しました。藪でなければ通常は40分ほどで着きます。
 澄川地熱発電所は次第に設備が充実して今回は高いタワーが建っていました。敷地の片隅の歩いて数分のところには一般見学者用に立派な見学設備があります。そこまでは一般車も来られますので、焼山湯ノ沢までの最短アプローチはここからになります。ただし早い時間に閉門しますので場内に車を置くと出られなくなります。
 
 ベコ谷地へは2〜3分で着きます。元は沼だったのかもしれませんが、現在はほぼ草原状で、一部に樹木の進出も始まっています。
 通る人が少ないので木道はありません。それも前回より植生が回復して踏み跡が薄くなっていました。ここにもモウセンゴケがいますが、まだ季節的に小さい株です。

 なぜか踏み跡の道沿いにワタスゲが多く咲いているようです。そういえばハクサンチドリは、車道沿いに群落をなしていますが、山中であれだけの群落を見かけることはありません。日当たりや土の固まり具合などがかえって生育に適しているのかもしれません。
 ベコ谷地からはぶな林を通って、後生掛温泉別館 山水閣の裏手に出る・・・はずでしたが、小川を渡るとそこは建物が解体されて整地されたところでした。
 駐車場に戻って充実した歩行はおしまいです。

 後生掛温泉で再び汗を流して帰途に着きます。少しだけ時間がありましたので黒谷地へ寄り道をします。こちらでは焼山では見かけなかった花たちに会うことが出来ました。 前述のように、例年ですとニッコウキスゲも多く咲いているのですが、今年はなぜか黒谷地では1本も見かけることがありませんでした。こういうこともあるんですね。

ここはほとんど木道なので軽装でも大丈夫です。 珍しく上向きのイワカガミ